センター試験 地理B 2016 解説 第2問
2018/03/12
センター試験 地理B 2016 解説 第2問
問1 ③
これは割り切って覚えておくべき,知識暗記型の問題。
覚えておくべき基本的知識として最初に押さえておきたいのはウです。
アメリカでは□がシアトルを,フランスではトゥールーズを指しています。
これら2つは自動車工業ではなく当然ながら航空機製造が盛ん。
シアトルにはボーイング社,トゥールーズにはエアバス社の工場があります。
アメリカで自動車工業が盛んなのはデトロイト,ヨーロッパではフォルクスワーゲンの工場があるドイツのヴォルフスブルクなどです。
①はアメリカが鉄の町として知られるピッツバーグ(近くにアパラチア炭田),イギリスはバーミンガム(ミッドランド炭田,バーミンガム鉄山)のことを指しています。
いずれも原料志向型で発達した古典的な鉄鋼業が盛んな都市です。
ピッツバーグは鉄鋼不況を契機に現在はハイテク産業都市に生まれ変わっていることも知っておきましょう。
②はアメリカがメキシコ湾岸油田のあるヒューストン,イギリスは北海油田のあるミドルスブラです。
これら2つは都市の位置と名前よりもメキシコ湾岸油田と北海油田の位置を地図帳で確認しておくことが重要だと思います。
都市とその特徴を1つ一つ覚えるよりも油田の位置を覚えておけば,周辺のメキシコやノルウェーでも原油の産出が多いことなどに応用できるから。
④はアメリカがシリコンヴァレーのあるサンノゼ,シリコンエレクトロニクスハイウェーのあるボストン,イギリスのロンドン,フランスのパリを指しています。
知識としてはシリコンヴァレーの位置だけでよいでしょう。
問題文にある,「大学や研究機関と結びついて先端技術産業が発達」しやすいという法則性を理解しておくほうが大切です。
当たり前ですが,こうしたハイテク産業は山奥の人気のない研究所で研究が進んでいるというイメージはないはずです。
問2 ④
難易度は低めの問題です。
④のビール工業は原料となる水が製品の重量の大部分を占めるため,市場志向型の立地となります。
サッポロビールという社名にも表れているように,日本の大手ビールメーカーは消費地に近い大都市に多く立地しており,ほぼ,太平洋ベルトと重なっています。
①のアパレル(服飾)産業は市場志向型。パリコレなどはまさに流行の最先端を行くからこその開催地ですね。
②のアルミニウム工業は電力志向型工業です。原料となるボーキサイトを製錬するために必要な電力が安く手に入る国で立地しやすいため,中国,ロシア,カナダ,アメリカ,オーストラリアなどの国々で生産量が多くなっています。
③の電気機械工業は労働力志向型工業です。
マレーシアや中国などが典型例。
問3 ⑥
やや見慣れない統計の組み合わせによる問題です。
この手の問題の鉄則は
日本に着目すること
です。すると工業部門の二酸化炭素排出量が日本が世界一であるはずはないため,カは不適。
逆にクは上位8位に中国が入っていない訳もないので,不適です。
すると二酸化炭素排出量は中国,アメリカ,インドなどが多くなっているキと判断できます。
次に技術貿易の受取額を考えるのがわかりやすいでしょう。
技術貿易の受取額とは注にあるように,特許権などを提供して受け取った金額とあるので,基本的に先進国で高くなるはずです。
アメリカが世界一であるということを知っていたら苦労はしませんが,ここではカの地図と比べた時にクの地図で中国や韓国が上位に入っていないこともヒントになると思います。
そうすると,日本やドイツ,アメリカなどで割合が大きくなっているカが産業用ロボットの稼働台数です。
ここで確認しておきたいのが産業用ロボットや工作機械(厳密には2つは違うのですが,地理Bを解く上ではほぼ同じものとして考えてよいと思います。)は日本とドイツがその生産や稼働において,世界の上位に立っていることです。
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出題頻度はそこまで高くありませんが,出題されると解ける人と解けない人の差が大きく開くパターンの問題です。
ぜひ,一度,統計集などで確認しておきましょう。
問4 ②
やや判断に迷う問題かもしれません。
ひとまず,1人当たり工業付加価値額が比較的高い①・②と低い③・④の分類できるため,③と④が中国かメキシコだとわかります。
正解にたどり着く上では,どちらか判断できる必要はありませんが,1人当たり工業付加価値額がより小さい④が総人口がとてつもなく大きい中国です。
①と②の見極めは,GDPに占める鉱工業の割合が日本と同様により低い①がサービス業が発達したスイスと判断します。
韓国は自動車,造船,鉄鋼業などが盛んでしたね。
スイスは物価が世界一高いことでも有名です。
そのため,ドル換算した時の工業付加価値額も高くなりますし,医薬品や時計で有名な精密機械など,付加価値額の高い製品を生産しています。
ノバルティス・ファーマという売上高世界第2位の企業もスイスに本社を置いています。
問5 ④
貿易の取扱量を示すこのグラフは頻出であるものの,苦手としている受験生も多いパターンだと思われます。
幸いにも今回の問題はそれほど難易度は高くありません。
まず間違いなくこの手の問題で出てくるのは中国です。
中国からの輸出(矢印)額は最大となる。
この鉄則から2つの国・地域に対して輸出額が369+244で最大となるQが中国です。
もう一つよく出てくるのが
アメリカがいつの時代も貿易赤字
という法則性。
アメリカはかつて,日本から自動車を買いすぎて貿易赤字(政治・経済では慢性的な財政赤字とともに双子の赤字と呼ばれています。),現在は中国から物を買いすぎて貿易赤字です。
最大の貿易相手国もかつての日本から中国へと変化していることもよく出題されます。
そのため,369+115が最大となるPがアメリカ。
残ったRがASEANです。
問6 ④
①は重化学工業のコンビナートが,②はベンチャービジネスの集積地域として,が不適。
③は「輸入代替型から輸出志向型」へなら正しい文章となります。
この輸入代替型と輸出志向型をひっくり返したひっかけ問題は頻出です。
輸入代替型工業とはこれまで輸入に依存してきた消費財などを国内で生産加工することです。
一方で輸出指向型工業とは輸出を目的に加工生産することです。
一般的にその国で必要なモノを国内で作れないから輸入している状態からやっとそのモノが国内で作れるようになった状態が輸入代替型工業なので,輸出志向型工業よりも各種工業の技術力は低いです。
そのため,
輸入代替型→輸出志向型という順番が鉄則。
④のコンテンツ産業とは経済産業省が
「映像(映画、アニメ)、音楽、ゲーム、書籍等の制作・流通を担う産業の総称」
と定義している日本のクールジャパン戦略のもと,最近注目されている言葉です。
一度教科書や資料集等で目にしたことがあれば,さほど苦労せず,正しい答えを選択できたでしょう。
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