センター試験 地理B 2016 解説 第3問
2016/01/26
センター試験 地理B 2016 解説 第3問
問1 ②
都市人口率は途上国ほど低く,先進国ほど高い。ただし,途上地域でも南米だけは高い。
これがまず最初のポイントです。
そのため,最も都市人口率が低い④がアフリカのナイジェリア。
一方で都市人口率が1990年時点ですでに高いものの,1人当たりGDPが1万ドル前後しかない②がアルゼンチンに該当します。
もともと,都市人口率が高く,1人当たりGDPも最も高い①がイギリスです。(このグラフは横軸の目盛りが等間隔ではない点に注意が必要です。)
残った③が東南アジアにおいて機械組立工業を中心とした輸出志向型工業により成長してきたマレーシアです。
問2 ①
これは単純な知識問題です。
①ターチン油田は中国国内最大の油田として有名です。
②ニースは地中海に面する観光保養都市のため,スキーは不可能。
③はパナマシティがパナマの首都だと知らなくても,パナマという国がラテンアメリカに位置していることがわかれば,地中海と紅海を結ぶのはスエズ運河であり,明らかに違うことはわかるでしょう。
④は多民族国家としてのカナダに関する問題です。
トロント:イギリス系住民:人口国内第1位
モントリオール:フランス系住民:人口国内第2位(ケベック州州都)
どっちかに首都を置いたらもめるから,2都市の中間地点に位置するオタワが首都。
という鉄板問題。
問3 ②
あらかじめ与えられている小地域の境界と鉄道路線という図がヒントとなります。
JRの路線に沿いつつ,私鉄路線の起点となっている図の中心部が都市の中心地と判断できるため,同様に図の中心地で階級区分図が高位を示しているアが人口密度です。
イとウでやや迷った受験生もいるかもしれませんが,
高齢者=田舎(≒都市の周り)という安易なイメージで解いてはいけません。
都市の中心部では農業や林業が盛んではないことはどの都市で見ても間違いないので,農業・林業就業者割合がイとなります。
イにおいて「なぜ都市の真ん中に高齢者が割と多いの?」と思った人も多いかもしれませんが,近年,日本で問題になっているのが都市部の高齢化です。
1960代から始まった高度経済成長期から50年以上が経過した今,当時,都市化と産業の発達に伴って農村部から都市部へ流入した人口が都市の中心部において高齢化が進んでいます。
都市の中心に多いのは,当時の都市が今のサイズより小さかったから。
知識ではなく,日本の歴史を踏まえたうえでの地理的な法則性を用いて答えを導き出す良問だと思います。
問4 ④
砺波平野の散村は村落の単元における超頻出トピックです。
文章にあるように,海外でも見られる散村とはアメリカにおけるタウンシップ制などを指しています。
当然,農家の経営規模は大きいため④が不適当です。
主業農家の生活を経験したことがない人がほとんどだと思いますが,農家さんの農地が分散しているということは農業経営においても非常に不利です。
例えば田んぼを3つ所有していて毎日その田んぼを見回る必要があるとすると,各田んぼ間の移動に軽トラックで15分かかるとすれば,単純に計算しても毎日移動時間に1時間も取られます。
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これは労働生産性を高める上では非常にマイナスとなります。
手作業による農作業が多い果樹栽培などでも同様です。
また,屋敷林を有する家屋は地図記号の読図でもよく出題されます。
国土地理院が示す正式名称では,「樹木に囲まれた居住地」という名称で出てきます。
問題文には「屋敷林」と出てくるのに,資料集には「樹木に囲まれた居住地」としか表記されていないため,受験生が自ら学習するときに,「いくら調べても出てきません。」とよく言ってくる地図記号の一つです。
問5 ②
世界各地の伝統的な住居に関する問題であり,難易度は低め。
センター試験の過去問や模試の問題などでも写真とともによく出題される典型的な問題です。
②はサハラ地域で見られる住居です。
アドべと呼ばれる日干しレンガを用いたり土壁を塗り固めたりして住居が作られますが,外壁の窓は小さくします。
これは日本の夏のように暑ければ窓を開けるという発想とは逆で,開口部が大きすぎると暑い外気が入ってくるため生活できたものではありません。
砂漠に近い地域では砂嵐によって家の中に砂が積もってしまうこともあり,開口部は小さくされるのが一般的です。
洞窟や地下洞が一年中気温が一定で夏涼しく,冬暖かいというのは聞いたことがあるのではないでしょうか。
これと同じ原理でなるべく石や土で厚い壁を持った住居のほうが,年中を通して快適に過ごせるのです。
①はイヌイットの人々が用いるイグルーと呼ばれる住居です。
氷のブロックを切り出して積み上げて作るかまくらのような住居ですが,イヌイットの人たちが一年中かまくらの中に暮らしていると思ったら大間違いです。
伝統的な狩猟採集生活をしているイヌイットは夏に数日~数週間ほど狩りのために遠征をします。
この時に,現在はテントなどが用いられる場合も多いものの,伝統的に周りにあふれる氷で作られるのがイグルーなのです。
③は朝鮮半島の伝統的な暖房器具であるオンドルです。
都市化が進んだソウルではマンションなどの集合住宅が一般的ですが,ソウルの冬は厳しいため,現在も電気を利用した床暖房が一般的です。
床暖房と聞くと,日本ではオール電化住宅などのCMでよく目にしますが,お金持ちのイメージですよね?
国によって暖房設備のイメージも変わってきますね。
④の赤道地域にみられる高床式住居はは床下の風通しを良くし,快適性を高めたり,獣害を避けたり,風土病が蔓延したりするのを防いだりする役割を持っています。
問6 ③
スリランカ=上座部仏教国という知識をきちんと押さえていれば,答えの③がすぐに選べるはずです。
ヒンドゥー教徒が多い④がインドに近いネパールです。
インドの両側(パキスタンとバングラデシュ)はイスラーム。なぜならバングラデシュはかつて東パキスタンと呼ばれパキスタンと同じ1つの国だったから。
とchiriは授業で毎年確認します。
そのうえで①と②は見極めが難しいですが,イスラームの割合がより高い①が中東に近いパキスタン,ヒンドゥー教の割合がわずかに高い②がガンジス川の河口に位置するバングラデシュと見ることが可能でしょう。
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