センター試験 地理B 2016 解説 第5問
2018/03/12
センター試験 地理B 2016 解説 第5問
問1 ③
①Aには大インド砂漠(←覚える必要なし。それよりも,インドの西側~パキスタンにかけては乾燥している,という広い地域での事実が大切です。)があり,Eにはベンゲラ海流によって形成されるナミブ砂漠があるため,いずれも農業には不向きでカカオ豆は栽培されていません。
カカオ豆といえば,もちろんガーナ・コートジボワール・ナイジェリアなどのギニア湾岸か,インドネシアなどの東南アジアが主産地です。
②BはAw(サバナ気候)に属し,南西季節風が夏に吹いて,西ガーツ山脈にぶつかり,大量の雨を降らせるため,冬に雨が多いというのは不適。
また,ブドウの栽培も暑すぎて不向きです。
Fはケープタウンが位置して,Cs(地中海性気候)に属し,冬に雨が多くブドウ栽培が盛んという説明文は正しくなります。
④はDがAw(サバナ気候),HがCfa(温暖湿潤気候)に属するため,夏に雨が多いのは正しいものの,ライ麦は小麦よりもさらに高緯度の寒冷地で栽培されることが多く,主産地はロシア,ドイツ,ポーランドなどです。
③はのCはインドのデカン高原を示しており,間帯土壌のレグールが綿花栽培に適していることは頻出の知識。
また,GもBS(ステップ気候)に属し,比較的降水量が少なくても栽培が可能な小麦が灌漑農法によって栽培されています。
G地点の認識が薄い受験生も多いと思いますが,その他の選択肢の誤答が比較的わかりやすいため,消去法で正解を選ぶ問題だと思います。
問2 ②
それぞれの選択肢を考える順番は人それぞれになる問題かもしれません。
④が最も1人当たりGDPが高く,輸出額に占める工業製品の割合が低いため,天然ガスや原油などの地下資源輸出が輸出の主要品目を占めるロシアです。
その逆に工業製品の割合が極めて高い①は世界の工場として君臨している中国であることも比較的容易にわかります。
残ったインドとブラジルはインドが総人口12億人と極めて巨大な人口を抱えていることから,1人当たりGDPがより少ない②がインド,③がブラジルとなります。
問3 ①
考えやすいのはイです。
ダイヤモンドの研磨加工・取引はインド・イスラエル・ベルギーが多い。
は覚えておきたい知識。
一方でアはクロムもすずもそれほどメジャーな鉱産資源ではないために,判別が難しかった問題です。
いずれも合金の材料に使われるため,ここもヒントになりません。
ポイントになるのは「インドと南アフリカ共和国で世界の全産出量の約50%を占める」という部分です。
クロムはレアメタルと呼ばれることから,
レアメタル=中国orアフリカ大陸での産出が多い
という頻出事項からアがクロムであると導き出してほしいところ。
すずは中国,インドネシア,マレーシアなどでの産出が多く,インドと南アフリカで50%は多すぎるという推測もできると思います。
問4 ②
正直,なかなか難しい問題です。
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正しい選択肢でなさそうなのは①と③ではないでしょうか。
①は独立直後は旧宗主国と旧植民地の貿易の結びつきが強いということは頻出の事項ですが,現在は両国とも中国が一番の貿易相手国となっています。
中国とわからなくても,さすがにずっとイギリスのままではないはずというイメージは持てるはずです。
また,③の公用語にはなっていないという選択肢も強く言い切りすぎですよね。
インドも南アフリカも実際に公用語になっていますし,知らなくても両国とも英語が話されているイメージはあるでしょう。
難しいのは②と④です。
④は正確には南アフリカが1934年,インドは第二次世界大戦後の1947年に独立します。
アフリカの第二次世界大戦前の独立国は,エチオピア,リベリア,エジプト,南アフリカの4か国であることは比較的よく出題されます。
一方でインドの独立年までは世界史を履修していない限り,なかなか地理の授業の中で触れられることは少ないのではないでしょうか。
それよりも,今回の問題では知識にはなるものの,知っておくべきはイギリス連邦という組織の存在でしょう。
イギリス連邦とはイギリスと,かつてイギリスの植民地だった独立国との緩やかな国家連合のことです。
といっても,結局何をしているの?と言われれば,答えは「ほとんど何もしていない。」です。
細かいことはいろいろとありますが,センター試験レベルで問われるような具体的内容はなさそうです。
時々,加盟国が集まってスポーツ大会的なことはやってるようですが。
「イギリス連邦」という言葉はセンター試験向けの問題集や模擬試験等でも目にしたことがあるので,まずはその存在と,概要,そしてかつてのイギリス植民地だった国々はかなりの数(全部で53か国)が加盟している,ということを抑えておく程度で対応できるように思います。
問5 ④
①について,インドのヒンドゥー教社会では,身分はヴァルナ,職業ごとの階級はジャーティと呼ばれます。
カーストとはこれらの身分制度と職業階級が結びついた総称です。
②では,インドに限らず,発展途上国の農村部では人口爆発が起こり,余剰労働力が農村部から押し出される(何人兄弟がいても,父親の家と土地を継げるのは長男のみで,次男以降は新たに農村内に家族を養うほどの農地を開墾し,新たに住居を作る余裕がないから)形で,都市に仕事を求めて労働者が都市部へ流入します。
これはpush型の人口移動(農村が人口を押し出すから)と呼ばれる現象です。
③のアパルトヘイトは黒人などを差別する白人優遇政策です。
諸外国からの強い非難にあい,現在,政策は撤廃されていますが,人々の間には根強い差別や偏見が今も残っているといわれています。
④一般的に途上国では都心部における開発と人口集中が続きます。
誤文にあるような商業施設やオフィスの郊外移転はこうした人口の一極集中による過密を嫌い,ドーナツ化現象が進む先進国でみられる現象です。
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