プレートテクトニクス理論,広がる境界,狭まる境界,ずれる境界
2020/04/22
それでは本格的に授業を始めていきましょう。
まず,みなさんに2つ質問です。
1つ目は地球上で一番高いところはどこでしょう?
2つ目は東日本大震災の地震(東北地方太平洋沖地震)はどうやって起こったのか?
世界一高いところはもちろんご存じ,ヒマラヤ山脈にあるエベレストですね。
高さは何mか知っていますか?
そう,8848mです。
近年のGPSを用いた計測では8850mだという話もありますが。
ちなみに日本一高い富士山はどれくらいの高さか分かりますか?
日本人の教養として知っておいてもいいと思うけど,3776mです。
いかにエベレストが高いかが,わかりますね。
ちなみにエベレストとはどういう意味か知っていますか?
答えは人名です。
インドをイギリスが植民地支配していた当時に,インド測量局の長官であったジョージ・エベレストという人の名前をとって付けられました。
現在はチベット語のチョモランマ,ネパール語のサガルマータという呼び方も一般的になっています。
ちなみに世界一低いところも知っていますか?
マリアナ海溝(チャレンジャー海淵)です。
cf.マリアナ海溝(チャレンジャー海淵)という名前の由来は…
ではマリアナ海溝の深さはどれくらいでしょう?
答えは10920mです。
この数字を覚える必要はありませんが,実はエベレストをひっくり返したものより深いんですね。
これは少し驚きじゃないですか?
それから,マリアナ海溝は地図上での場所を理解しておくことも大切です。
地図帳を開いて,場所を確認してください。
意外と日本に近いところにあることが分かりますね。
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それでは,このエベレストはどうやってできたか,聞いたことはありますか?
ヒマラヤ山脈やエベレストのでき方についてはテレビで見たり,どこかで聞いたりしてなんとなく知っている人もいるでしょう。
そうです,インドがぶつかって盛り上がって・・・みたいな感じです。
正確にはユーラシアプレートにインド・オーストラリアプレートがぶつかってヒマラヤ山脈がせりあがる形で作られました。
その中の最高峰がエベレストです。
プレートという言葉は中学校の地理の授業で耳にしたことがある人もいるでしょう。
私たちが暮らしている地球の表面は十数枚のプレートによって構成されています。
このプレートがそれぞれ移動しているとする理論をプレートテクトニクスと呼んでいます。
ちなみに,このプレートテクトニクスという言葉は今日の授業で最も大切な言葉です。
高校2年生の11月にある模試では2回に1回といっていいほど,このプレートテクトニクスという言葉を書く問題が出題されます。
プレートテクトニクスが書けたら,即2点GET。
テクトニクスです。書き間違えないように。
定期テストや模試でテクニクスとかテクニックとか書き間違えが多いです。
もう覚えましたね。
地理Bの模試で偏差値を上げるには過去問で演習あるのみ
さて,2つ目の質問の話に戻りましょう。
このプレートテクトニクスの話を聞けば,東北地方太平洋沖地震のメカニズムについても,ニュースなどで見たモデル図を思い出すかもしれません。
「東日本大震災の地震(東北地方太平洋沖地震)はどうやって起こったのか?」
答えは「北アメリカプレートに太平洋プレートが沈み込み,北アメリカプレートにたまったひずみが跳ね上がって地震が起こった。」ですね。
東北地方の太平洋沖はこの2枚のプレートの
狭まる境界に位置しています。
先ほど説明したプレートテクトニクスの考えに基づくと,
地球上にはプレート同士の狭まる境界,広がる境界,ずれる境界の3種類が存在します。

広がる境界

狭まる境界

ずれる境界
3つの境界が生まれる理由については理解できますか?
プレートテクトニクスによってプレートが動くというのは先ほど確認しましたが,それではプレートはどうやって動いているのでしょうか?
当たり前ですが,プレートが自らの意志で好きな方向に自由に動いているわけではありません。
答えは「プレートの下で,プレートの移動方向と同じ向きにマントルが動いているから。」です。
マントルの対流によってプレートが動く
正確には違うのですが,高校生のみなさんは,マントル≒マグマみたいなものというイメージでよいと思います。
cf.マントルとマグマの違い
地球の内部はとてつもない高温でドロドロ煮えたぎっているというのは聞いたことがあるはずです。
cf.地球内部は液体?個体?
沸々と煮えたぎっているものでは,対流運動が起こります。
鍋でブロッコリーを茹でたら,鍋の中心から外側に向かってくるくるとブロッコリーが回りますよね?
あるいは炊飯器のCMでお釜の断面図が出てきて,米がくるくる回って「おどり炊き」みたいなシーンを見たことないですか?

対流運動
あれが対流運動です。
この現象が地球内部で起こっているので,その上に乗っかっているプレートもマントルの動きに沿って動いていきます。
地球も元々(2億2500万年前)はパンゲアとよばれる超大陸(1つの大きな大陸)でした。
そこからローラシア大陸(現在の北米大陸とユーラシア大陸)とゴンドワナ大陸(ゴンドワナランドとも。現在の南米大陸,アフリカ大陸,インド亜大陸,オーストラリア大陸,南極大陸,アラビア半島,マダガスカル島など)などに分かれ,いまの形になっています。
cf.ゴンドワナとローラシアという言葉の起源は
このプレートテクトニクスの先駆けともいえる大陸移動説を1912年に発表したのが,ドイツの地理学者であるウェゲナーです。
当時は誰も聞く耳を持たなかったということですが…
余談ですが,ウェゲナーは気候区分で出てくるケッペンの娘婿にあたります。
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ウェゲナー:大陸移動説という言葉くらいは知っておいてよいと思います。
ということで,プレートの3つの境界のうち,どの境界がプレートを動かす始まりか分かりますね?
そうです,広がる境界です。
地球内部から沸き上がり,海に出てきたマントルが冷え固まることで新しいプレートが生み出され,そのプレートが外側へと広がっていきます。
広がる境界とはプレートが生まれる場所です。
これによってプレートが動いていけば,必ずどこかで別のプレートとぶつかります。
プレート同士がぶつかるのが狭まる境界。
ずれる境界はイメージしにくいかもしれませんが,プレートは球体である地球を覆っているものなので,2Dではなく,3Dの表面で起こっている以上,広がるでもなく,狭まるでもない,ずれる境界が生まれます。
さて,東北太平洋沖に話を戻します。
聞いたことがある人も多いと思いますが,地震の震源となった海域は日本海溝と呼ばれる部分です。
プレートの狭まる境界では海溝が形成されます。
さてさて,ここで大きな疑問が1つ浮かびませんか?
なぜ,プレート同士がぶつかるのに世界一高いヒマラヤ山脈のエベレストやものすごく深い(低い)海溝が生まれるのでしょう?
プレート同士が近づいていってぶつかり始めが何かのはずみで上にせりあがっていくか,下に沈んでいくかの違い?
そんな奇跡的な理由ではないはずですね。
答えはぶつかるプレート同士の重さ(比重・密度)の違いに秘密があります。
同じ重さ同士のプレートがぶつかると,お互いのプレートにめりめりとめり込んでいくため,地層がねじれながら(これが褶曲です)大山脈が形成されます。
一方で,重さの異なるプレート同士が異なると,当然ながら重い方が下に沈みます。
これによって海溝が生まれます。
プレートが軽いため,沈み込まず,大陸として残っていったものを大陸プレート(ユーラシア,北アメリカ,南アメリカ,アフリカプレートなど),密度が大きく重たいものを海洋プレート(太平洋プレート,フィリピン海プレートなど)と呼んでいます。
ここで,プレート同士の境界面で形成される地形を確認しましょう。
まず,狭まる境界について。
重さの等しいプレート同士(大陸プレート同士)の狭まる境界では造山運動が起こり,が形成されます。

大陸プレート同士の狭まる境界
逆に重さの異なるプレート同士(大陸プレートと海洋プレート)の狭まる境界では海溝が形成され,地震が発生しやすくなります。
また,大陸プレート側に弧状列島(島弧)と呼ばれる島が形成されます。
日本列島もこの弧状列島です。

大陸プレート+海洋プレートの狭まる境界
cf.なぜ弧状列島は直線ではなく,弧状になるのか
海溝付近で地震が発生しやすいこともすでに述べました。

地震発生のメカニズム
また,沈み込んだプレートはマントルにぶつかると溶け,その一部が地上に噴き出すことで火山が形成されます。
火山や温泉が日本に多いのもこれが理由です。
つまり狭まる境界はプレートが消えていく場所ともいえます。
次に広がる境界について。
海の中からマントルが噴出してくる部分には海嶺が形成されます。
これは海底山脈とも呼ばれます。

広がる境界における海嶺
海の底でプレートが広がると溝ができそうだと思う人もいると思いますが,それは先ほどから説明してきたように誤りです。
海水でマントルが冷え固まるので,どんどんと新しいプレートが形成されていき,その中央には冷え固まった塊(海嶺)が出来上がるのです。
最も有名なのが大西洋中央海嶺です。
場所も重要なので地図帳で確認しましょう。
この海嶺から地球上の80%近くのマントルが新たに噴き出し,プレートテクトニクスの原動力を生み出しているといわれています。
この地図帳だと一番最後のページの背表紙
最後は陸上における広がる境界です。
マントルの対流によって現在大陸となっている部分でもプレートが裂ける場所が存在します。
最も有名なものがアフリカ大地溝帯(グレートリフトバレー)です。

広がる境界の地溝
これも2年生の最初の模試でよく出題されます。
アフリカ大陸の白地図が目の前に出てきたら,大まかな位置を線で引けるように地図帳や資料集を確認しておきましょう。
もともとはくっついていたアフリカとアラビア半島が左右へ離れ,その間に海水が流入したのが紅海です。
ちなみに海洋プレートは玄武岩という岩石などから構成されています。
玄武岩質の土壌はコーヒーの栽培に適していると言われ,紅海の西側にはコーヒーの原産地であるエチオピアのカッファ地方が,東側にはモカコーヒーの産地であるイエメンのモカが存在します。

広がる境界とコーヒーの関係
農業の単元でも話をしますが,こういった自然地理学の内容が各地域の産業の特徴を生み出していることにつながることも,地理学の面白さの1つです。
最後のずれる境界で覚えておくべきはアメリカのカリフォルニア州にあるサンアンドレアス断層です。
サンアンドレアスね。
ずれる境界はほぼここしか出題されません。
場所とずれる方向だけ確認しておけばOKです。
太平洋プレートが日本に向かって狭まっていることを思い出せば,サンアンドレアス断層付近のプレートのずれる方向もわかるはずです。

ずれる境界のサンアンドレアス断層
以上がプレートの境界面で形成される地形ですが,念のため補足しておくと,地震は狭まる境界でしか発生しないものではありません。
世界の地震の震源域を世界地図にプロットした図もよく教科書や資料集に掲載されており,その図と世界のプレート境界を比べるとよくわかりますが,地震はプレートのどの境界であっても起こっています。
プレートが活発に動いているというのは地殻変動が激しい地域といえるので,広がる境界でもずれる境界でも地震は起こっているのです。
ただし,私たちが暮らしている日本のように,狭まる境界で発生する地震のほうが,時にマグニチュードの大きい(被害の大きい)or体感でわかる地震が発生しやすいのも事実です。
ということで,地震=狭まる境界でしか発生しない,という誤った認識だけは持たないようにしましょう。
最後にプレートのど真ん中で作られる地形もあるので紹介しておきます。
それがホットスポットです。
東日本大震災以降,放射線量が局所的に高いところをホットスポットと言いますが,地学ではマントルの対流運動の影響で,局所的にプレートを突き抜けて火山を形成するポイントのことを言います。
最も有名なのはハワイ諸島です。
ハワイの位置も地図帳で確認しておいてほしいのですが,ハワイはプレートの境界ではなく,太平洋プレートのど真ん中に位置していますね。
太平洋プレートは日本に向かって狭まっているため,ハワイも年に数cmずつ日本に近づいており,数千万年後には日本とハワイはぶつかるという予測もあるそうです。
ということで,今日の授業のポイントは
プレートテクトニクス理論とは何ぞや?
狭まる・広がる・ずれる境界で起こっていることと,それぞれで生まれる地形
模試で書けるようにするべきは
プレートテクトニクス理論
グレートリフトバレー(アフリカ大地溝帯)
サンアンドレアス断層
の3つです。
次の授業は地体構造-新期・古期造山帯,安定陸塊(楯状地・卓状地)について学習します。
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