地体構造-新期・古期造山帯,安定陸塊(楯状地・卓状地)
2020/04/22
さて,前回の授業では主にプレートテクトニクス理論や地球内部の構造について学習しました。
今回はこれらによって実際の地球表面に形成される大地形のお話です。
ちなみに,そもそもですが大地形とは海溝・海嶺・山脈・弧状列島などの文字通り,大きな地形で,例えば世界地図で表しても認識できるくらいのサイズの地形です。
一方で,小地形とはその逆に,みなさんが中学校でも学習したような扇状地や三角州など,より小さな地形を意味します。
そしてさらに大切なのは,大地形と小地形は基本的に作られる要因が全く異なるという点です。
このときに出てくるのが内的営力と外的営力です。
基本的に大地形は主に内的営力の作用によって作られ,小地形は外的営力の作用によって作られます。
では,この内的営力と外的営力って何?ということを考える前に,見てほしいのが以下のモデル図です。

地球表面
とてつもなく雑な図ですが,ご容赦を。
この図でまず,認識してほしいのは,「地球は凸凹している。」という事実です。
最高地点はエベレストの8848m,最深地点はマリアナ海溝の-10920mでしたね。
高さでいうと,最大で20km近い凸凹があるわけです。
そしてこの凸凹を地理では起伏と呼びます。
内的営力はこの地球の起伏を大きくする力を持っています。
マントルの対流によってプレートが動き,大山脈ができたり,海溝ができたりするからでしたね。
これは前回の授業を理解していれば,すぐに納得してもらえるはず。
ということは,
外的営力はその逆なので,地球の起伏を小さくする力を持っています。
具体的には風化・侵食・運搬・堆積などの作用です。
侵食や堆積などはみなさんでも実際にどんなことが起こっているのかの想像はしやすいでしょう。
地面が削られたり,削られた土砂が積もったりです。
さて,ここで皆さんに考えてほしいのは,
外的営力を生み出す根源は何か?ということ。
内的営力は地球内部の熱ということはわかるはずです。
それでは外的営力の大元は何なのでしょう。
よく用語集などでは「地球の外側から作用して地形を変える力」などと説明がしてあることもあります。
地球の外側?そう,宇宙人!ではないですね。
太陽の熱エネルギーです。
詳しくは気候の単元で学習しますが,太陽の熱で温められて,雲ができて雨が降るといったことは中学校の理科でも学習するはずです。
風が吹くのも実は太陽があるからこそです。
そのため,地球自身はみずからの起伏を大きくし,太陽は地球の起伏を小さくしようとしている,というせめぎあいがずーっと続いているのです。
前置きが長くなりましたが,今日は主にこの内的営力によって作られる地形について学習するということを意識しておきましょう。
さて,いきなりですが,次の世界地図中にある①~⑫の山脈の名前を答えてみましょう。

山脈の名前がわかるかな?
【答え】
① アトラス山脈 ② ピレネー山脈 ③ アルプス山脈 ④ アペニン山脈
⑤ カルパティア山脈 ⑥ カフカス山脈 ⑦ エルブールズ山脈
⑧ ザグロス山脈 ⑨ ヒマラヤ山脈 ⑩ アラスカ山脈 ⑪ ロッキー山脈
⑫ アンデス山脈
いくつ答えられましたか?
これらの山脈は世界の山脈の中でも高くて険しいことで有名です。
そしてこれらの山脈の分布には一定の法則性がありますね。
そうです,中学校でも学習したアルプス=ヒマラヤ造山帯と環太平洋造山帯に属する山脈たちです。
この2つの造山帯のことを新期造山帯と呼びます。
新期造山帯とは地質時代という地球が誕生してから有史時代(文字によって歴史が記録され始めた時代)以前までの時代区分において,中生代の後期~新生代という時代に造山運動が活発になった地域のことです。

新期造山帯の山脈
黄色で示した新期造山帯の分布に①~⑫の山脈がほぼ含まれているのがわかると思います。
新期造山帯の分布には前回の授業で学習した法則性と関連が深いのですが,それは何か分かりますか?
そうです,答えは狭まる境界。
新期造山帯とは新しく,いまこの瞬間もプレートが狭まり,造山運動が活発に起こっている地域なので,新期造山帯≒狭まる境界という認識でOKです。
cf.新期造山帯と古期造山帯という概念はもう古い?
まさに内的営力によって起伏が大きくなっているのです。
そのため,新期造山帯では地震や火山も多いという法則性が成り立ちます。
東北地方太平洋沖地震(2011)やスマトラ島沖地震(2004),トルコ東部地震(2011)など,近年起こった大規模な地震もすべてこの新期造山帯沿いの地域で起こっています。
ちなみに狭まる境界では弧状列島も形成されるのでしたね。
そのため,上の図中に示したように,マレー半島,スマトラ島,ジャワ島,ニューギニア島,ニュージーランド,フィリピン,台湾,日本列島,千島列島,アリューシャン列島,西インド諸島,南極半島などはすべて弧状列島です。
少しひねった模試の問題では南極に新期造山帯があることを問うてくる問題もあるので要注意です。
しかし,よく見れば,南アメリカ大陸の南端のカーブが南極半島まで一続きのラインであるように見えるはずです。環太平洋造山帯がアンデス山脈で終わらずに,そのまま南極半島まで続いているのですね。
センター試験の受験までに覚えておくべき新期造山帯の山脈は上に示した12個だと思いますので,模試やセンター試験の前などに,何度も思い出せるか活用してみてください。
地理Bは暗記ではない,しかし模試のために最低限覚えるべきこともある
さて,次の地図中の①~⑧はどうでしょう。

これらの山脈はどうでしょう?
【答え】
① ペニン山脈 ② スカンディナビア山脈 ③ ドラケンスバーグ山脈
④ ウラル山脈 ⑤ テンシャン(天山)山脈 ⑥ 大シンアンリン山脈
⑦ グレートディヴァイディング山脈 ⑧ アパラチア山脈
これらは古期造山帯に属する山脈です。
古期造山帯は地質時代において古生代と呼ばれる時代に大褶曲山脈となり,その後造山運動が止まり,侵食され,低くてなだらかになった山脈が分布する地域のことをいいます。
要するに,昔,新期造山帯だったところとも言い換えられます。
たとえば,ペニン山脈,スカンディナビア山脈,アパラチア山脈は昔,地球がパンゲアだった時代にくっついていて,一続きの山脈でした。
現在の大西洋を除いてくっつけるとぴったり一致するのがわかりますね。
学習を進める上では,
現在の新期造山帯(アルプス=ヒマラヤ造山帯と環太平洋造山帯)の大まかな位置を覚えておいて,その地域以外にある山脈が古期造山帯に属する
という押さえ方が最も効率的でしょう。
古期造山帯で注意が必要なのは,中国にあるテンシャン山脈です。
テンシャン山脈は古期造山帯に属するものの,再隆起しているために,標高が6000~7000m級の高峻な山々が連なる山脈です。
どこかの私大の入試問題で記述させる問題が出たことがありましたが,再隆起しているために,復活山脈とも呼ぶようです。
テンシャン山脈は古期造山帯なのに標高が高いとか,中国においての地形断面図で位置を読図させるとか,いろいろなパターンで頻出ですので要注意です。
cf.バリスカン造山帯とカレドニア造山帯
最後は安定陸塊。
地質時代でいうと先カンブリア時代と呼ばれる46億年前に地球ができた頃,もっとも早く作られた大陸のうち,これまでに一度も造山運動を受けていない地域です。
プレートの狭まる境界になったことがない地域と言い換えてもよいでしょう。
そのため,標高は一般的に低く,低平な土地が続いています。
覚え方としては新期でも古期でもなければ安定陸塊と考えればOKです。
以上のように見てきた新期造山帯,古期造山帯,安定陸塊という分類のことを地体構造と呼びます。
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これから地理の学習を本格的に始める上で,様々な大陸や国が登場しますが,その都度,地帯構造は何か?という点を意識して学習していくことは非常に大切なので,ぜひ覚えておいてください。
それではここで,大陸の高度別面積の割合を示した次の表を見てみましょう。
ちなみに,この表は2年生のうちの模試では地形の単元で頻出の問題です。
着眼点のポイントは決まっているので,ぜひマスターしてください。
それでは,ヨーロッパ・アフリカ・アジア・オセアニア・北アメリカ・南アメリカ・南極が表中の①~⑦のそれぞれどれに該当するか考えてみましょう。

どれがどの大陸に当てはまるかな?
答えは次のようになります。

大陸ごとの高度別面積の割合
模試では①~⑦のうち,どの大陸が空欄になって出題されてもおかしくないため,それぞれの特徴,判断基準を確認しておきましょう。
まず,アジアは4,000~5,000mが4.1%,5,000mが1.1%と高度が高い面積の割合が最も高いことが特徴です。
この理由を具体的な地形をいくつか挙げて説明できますか?
世界最高峰のエベレストを擁するヒマラヤ山脈,その背後に続くチベット高原,再隆起で古期造山帯ながら7,000mを超える山々を擁するテンシャン山脈,ペルシャ語で「世界の屋根」を意味するといわれるパミール高原などが含まれるからですね。
次にヨーロッパは高度が200m未満の極めて低平な土地が52.7%と,全面積の半分以上を占めており,これは他の大陸と比べてもダントツで高いのが特徴です。
ヨーロッパに海外旅行に行ったりしたことがなければ,なかなかこの感覚は想像しにくいと思いますが,よく地図帳の背表紙などには世界地図を高度別に色分けしたものが掲載されています。
これを見ると,いかにヨーロッパ~東ヨーロッパ平原~西シベリア低地にかけて標高が低く,平らな土地が続いているかということを視覚的に(ほとんどの地図帳が黄緑色で着色されているはず)理解できるはずです。
日本の大都市も太平洋ベルト沿いの平野部に立地し,総人口の大部分が集中していることと同様に,村落と都市の単元でも学習しますが,人間が生活を営む上でやはり便利なのは平らな地域です。
そのため,ローマ文明を始め,古くからヨーロッパにおいて文明が発達し,世界史の教科書にもたびたび登場する様々な国家が成立したのは,地形的な要因が大きいというのは有名な話です。
関連書籍『「地形」で読み解く世界史の謎』(武光 誠,2015年,PHP文庫)
さて,次はアフリカ。
アフリカは200~500mが38.9%,500m~1,000mが28.2%となっており,ヨーロッパとは逆に最も200m未満ではなく,それより少し高度が高い地域の面積の割合が最も高いということが特徴です。
アフリカ大陸の地体構造は北部で新期造山帯のアトラス山脈と南部で古期造山帯のドラケンスバーグ山脈を除けば,すべてが安定陸塊に属します。
簡単な図で示すと以下のようなイメージです。
一言でいうなれば,台地状の大陸です。

アフリカは台地状の大陸
そのため,沿岸部には台地の端に滝がいくつも存在し,ヨーロッパの列強が植民地支配を進めた時代に,ヨーロッパから船でアフリカ大陸に到着しても,海岸沿いには低平な土地がわずかしかなく,滝を遡るようにして探検を進めていった結果,各国の支配地域が滝沿いの縦長になったというのは有名な話です。
そのため,大西洋岸~ギニア湾岸のセネガル,ガンビア,ギニアビサウ,ギニア,シエラレオネ,リベリア,コートジボワール,ガーナ,トーゴ,ベナンなどは地図帳で確認するとすべて海沿いから内陸に食い込むように縦長な国家が続いているのがわかるはずです。
こうした自然環境が私たちの現代世界の在り様に影響を与えているという点で,地理学はとても面白いと思いませんか。
北アメリカと南アメリカの見極めはやや難しく,出題頻度もあまり高くないので後に回し,より重要度の高いオーストラリアを先に考えましょう。
オーストラリアは表を見てわかるように,高度2,000m以上の面積が0.0となっているのが特徴です。
理由ももう答えられますね?
そうです,低くてなだらかな古期造山帯であるグレートディヴァイディング山脈しか存在しないからですね。
オーストラリア大陸はグレートディヴァイディング山脈を除いてすべて安定陸塊です。
覚える必要はないですが,一応話をしておくと,グレートディヴァイディング山脈の南にオーストラリアアルプス山脈という小規模な山脈があり,その中の最高峰は標高2229mのコジアスコ山が存在します。
しかし,オーストラリア大陸の全面積に占める割合は極めて小さく,調整の結果,表中では0.0と表記されていると理解してください。
次に南極大陸。
雪と氷のイメージしかない大陸かもしれませんが,この問題では比較的よく出題され,際立った特徴を持っている大陸です。
その特徴とは表中で囲っているように,1,000~2,000mが22.0%,2,000~3,000mが37.6%,3,000~4,000mが26.2%となっており,台地上の大陸だったアフリカよりもさらに平均高度がずば抜けて高いことです。
しかも南極大陸の上にはご存知のように大陸氷河と呼ばれる氷床(氷の塊)が乗っかっています。
その氷の厚さは最も高いところで4000m以上,平均でも2450mもあるのです。
つまり,2000mや3000mもある大陸の上に富士山の高さ以上の氷の塊が乗っかっているところもあるような大陸なのです。

南極大陸はこんなに高い
さて,残った北アメリカと南アメリカですが,南アメリカの200m未満の38.2%と4,000~5,000mの2.2%が決めてになります。
それぞれ南アメリカにある具体的な地形からこの特徴を説明できますか。
200m未満はアマゾン盆地,4,000~5,000mはアンデス山脈ですね。
この2つの高度帯が北アメリカ大陸よりも割合が大きいという点で,北アメリカと南アメリカを判別します。
このことは意外にもロッキー山脈の最高峰はエルバート山の標高4,401mでさほど高くなく,北アメリカ大陸最高峰はロッキー山脈よりもより小規模なアラスカ山脈にある標高6,190mのマッキンリーであることからも理由づけできます。
これはイッテQのイモトアヤコが登頂したシーンをテレビで見た人も多いのではないでしょうか。
山脈全体として圧倒的に面積の大きいロッキー山脈は標高がさほど高くなく,北アメリカ最高峰を擁するアラスカ山脈は北米大陸に占める面積として非常に小さいのです。
一方でアンデス山脈は標高6,960mを誇るアコンカグアを最高峰として擁し,6,000mを超える高峰が20座以上存在するというので,そりゃあ4,000m以上の面積は南アメリカ大陸のほうが高くなるはずですね。
こちらもイモトアヤコが登頂に挑戦したものの,あと数百メートルで登頂を断念したという回を観た人も多いのではないでしょうか。
それでは最後に,安定陸塊に含まれる地形のうち,楯状地と卓状地,構造平野と準平原について説明しますので,しっかりと理解してください。
これから何度となく出てくる言葉ですが,非常に混同する生徒も多いのですが,その形成のメカニズムまで理解しておけば,農業などの単元でも活用できる重要なポイントとなります。
まずはじめに,
楯状地≒準平原,卓状地≒構造平野
という関係にあるということを押さえましょう。
楯状地と卓状地というのは地形の形に由来した名称であるのに対し,準平原と構造平野はでき方=成因に由来した名称です。
楯状地とは縦のような形をしたという意味で,ドラクエの勇者が装備していそうな楯をイメージしましょう。
おなべのフタではダメですよ笑
どちらかというと西洋風の楯はゆるやかなカーブを描いており,それを地面に伏せたような形からこのように呼ばれます。
具体例としてはカナダ楯状地やバルト楯状地などがあります。
今回すべてを一度に暗記する必要はないので,一度地図帳で場所は確認しておきましょう。
さて,以下に示した楯状地のモデル図を見てください。

楯状地
楯状地は先カンブリア時代に作られた基盤岩と呼ばれる岩盤が地表に露出しています。
楯状地のポイントは46億年前に地球が誕生し,のちに大陸が形成されてから,ずっと陸地であった(一度も海に沈んだことがない)or造山運動を受けたことがない(安定陸塊だから当然ですが)ために,ずっと侵食を受け続けてきた,という点です。
海に沈んだことがなければ,雨や風によって侵食と風化作用を受け続けたり,氷河期に大陸氷河による氷食を受けたりするだけなので,どれだけ固い岩盤であっても,長い年月の中で周辺から少しずつ削られていくわけです。
一方で卓状地は同様に先カンブリア時代に作られた岩盤が長い年月の中で,地殻変動や海面の上昇or低下を繰り返したために,海に沈んだり,陸地化したりを繰り返した地形です。
岩盤が海に沈むと,周辺の河川が運んできた土砂が河口に流れ着き,海底に堆積します。
そして,いまこの瞬間には陸地に存在しているものが卓状地です。
そのため,卓状地は先カンブリア時代に作られた岩盤の上に,それぞれの時代に堆積した種類の異なる地層が重なっています。
ロシア卓状地やシベリア卓状地などが有名です。

卓状地
もしあなたが,楯状地と卓状地の上にそれぞれ立っているとしたら,どんな様子か想像できますか?
地域差はあるものの,楯状地は岩盤がむき出し,卓状地はいわゆる地面が土なわけです。ということは,気温などの自然条件にもよりますが,農業に向いているのは土があって耕作可能な卓状地ということになります。
楯状地では表土が薄く,作物栽培には適さない地域も多いため,バルト楯状地やカナダ楯状地ではトナカイの遊牧や狩猟生活など,自然条件に適した農業が発達していることも多いのです。
わずかなコケや雑草しか育たず,人間はそれを食べても生きていけないけれども,それらを家畜のエサとして,その家畜を人間たちが食べたり現金に換えて生活するという知恵を自然条件に適応して生み出してきた人間の営みというのは素晴らしいと思いませんか?
先人たちの知恵に脱帽です。
最初にそんなことを思いついた人々はすごいなーとchiriは常々思います。
今日のまとめです。
内的営力…地球の起伏を大きくする力(地球の熱エネルギー)
外的営力…地球の起伏を小さくする力(太陽の熱エネルギー)
地体構造
⇒新期造山帯(高くて険しい)…アルプス=ヒマラヤ造山帯,環太平洋造山帯
⇒古期造山帯(低くてなだらか)…新期造山帯以外の山脈
⇒安定陸塊…新期と古期以外のすべて
ex.楯状地(岩盤むき出し)
卓状地(地層が岩盤の上に堆積)
次の授業では侵食平野-準平原(残丘),構造平野(ケスタ,メサ,ビュート)について学習します。
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