火山地形・災害
2020/04/22
前回の授業では侵食平野について学習しました。
今回,学習する内容は,正直に申し上げますと,
「過去10数年のセンター試験であんまり出題されないために,あんまり必死に勉強しなくてもよかった単元」です。
しかし,
「これから10数年にわたってのセンター試験やその後の大学入学希望者学力評価テスト(仮称)などにおいて,出題頻度が高まっていくことが予想される単元」でもあります。
結局,しっかり勉強しとかないといけないんですね。
さて,火山地形に関して最も最優先で確認すべきはカルデラです。
コニーデ,トロイデ,アスピーデとかではありません。
これらは出ないので,興味のある人は自分で調べてください。
最も問題として出題されるのは特にカルデラ湖。
言葉だけはテレビなどで耳にしたことがある人も多いかもしれません。

カルデラのでき方
火山の火口にできた巨大なくぼみです。
熊本県阿蘇市は,阿蘇山を中心とする巨大なカルデラの中に街が発達し,外輪山に囲まれています(カルデラはくぼみ,外輪山はカルデラの縁=一番尖がったとこのこと。)。
火山が噴火・爆発した衝撃で自分の頭が吹っ飛んで,噴火後にへこむパターンか,火山の内部にたまっていたマグマが噴き出したために,山の中が空っぽになり,自分の重みで落ち込み,へこむパターンのどちらかですが,大学受験レベルでは大して重要ではありません。
重要なのはカルデラに水が溜まったらカルデラ湖,そしてカルデラ湖は
地図で見たときに,湖の形が丸い!
ということです。
具体的には洞爺湖,支笏湖,屈斜路湖,摩周湖,阿寒湖(北海道),十和田湖(青森県),田沢湖(秋田県),蔵王の御釜(宮城県),箱根の芦ノ湖(静岡県)などです。
面倒ですが,一度地図帳を開いて,それぞれの湖の形を確認してみてください。
明日やろうは馬鹿やろうです。
いま,地図帳開かないと,絶対に後で開きませんよ。
さて,そのほかの湖として,
断層湖…琵琶湖(滋賀県),バイカル湖(ロシア),タンガニーカ湖(コンゴ民主・タンザニア),マラウイ湖(マラウイ)など。
琵琶湖が断層湖というのは意外に知らない人が多いですが,知っておくべきです。
琵琶湖同様,断層湖は地層の裂け目に水が溜まったものなので,
地図で見ると細長いものが多い
です。
地形図で湖を示し,そこに描かれている湖がカルデラ湖か,断層湖かを判別させるような問題もみられます。
次に潟湖(ラグーン)…サロマ湖,能取湖(北海道),八郎潟(秋田県),浜名湖(静岡県),中海(島根県)など。
これは海が砂州によって切り離されてできるので,当然のことながら,海沿いにある湖です。
そのため,これは地図で見れば簡単ですが,簡単なために地図では出ません笑
上に示したカルデラ湖や断層湖の具体例も含めた語群の中から,湖の名前(心優しければプラス都道府県名も)のみを示し,それぞれの成因を判断させるなどの出題が多いです。
だから,有効な勉強方法は…
そう,とりあえず今地図帳を開いて,一度確認しておくこと。
一度にすべてを覚えるのなんて無理です。
仮にすべて覚えたとしても,すぐに忘れます。
その都度その都度,手を動かして身体に刷り込んでいくことが重要です。
「覚えようとして暗記する」のではなく,「何度も見ているうちに自然と覚えた」
という勉強方法のほうがはるかに記憶への定着力も高く,大切だとchiriは常々思っています。
さて,火山地形に関して残りの情報は以下のモデル図を見といてください。

火山の種類
どこの資料集や図表にもある典型的な図です。
ポイントは火山の形状,マグマの粘性(どれくらいドロドロしているか),マグマの温度(噴出時)とそれぞれの典型例です。
マグマの岩質は正直,あまり問題として見かけたことがないので,重要視する必要はないと思います。
地学をセットで履修している人は,一緒に見ておいてもよいでしょう。
で,この形状・粘性・温度の特徴を1つずつ覚えなくてもまとめて思い出せる魔法の食べ物を紹介します。
何だかわかりますか?
そう,カレーです。
コテコテの日本のカレールーを思い浮かべてください。
それから最近話題の北海道発祥のスープカレーを思い浮かべてください。
それぞれが火山の火口から噴き出してきたら,どんな形の火山になるかわかりますね。
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サラサラスープカレーはなだらかな楯状火山。
ドロドロカレーは成層火山や溶岩ドーム。
マグマの温度はどうでしょう?
カレーを作った次の日の朝,鍋の中のカレーはどうなっていますか?
バキバキのカチカチですね。
しかしゆっくり温めていくと,不思議と個体から液体へと逆戻りです。
マグマの温度が高いのはサラサラスープカレー,温度が低いのはドロドロカレーです。
さて,最近注目が集まっているのは防災教育です。
つまり,火山が噴火したときに実際に発生する現象。
ここでいきなり質問です。
以下の現象や用語がどんなものか,すべて想像or説明できますか?
・火砕流
・溶岩流
・火山泥流
・火砕サージ
・水蒸気噴火
・火山礫
・火山灰
・火山ガス
教科書や資料集に載っていないものもありますが,近年の御嶽山や箱根山,桜島などの噴火によってニュースなどでも耳にする機会の多い言葉ですし,そんなにそれぞれが難しくないので,一度整理しておきましょう。
・火砕流…高温のガスと火山砕屑物が高速で流下する現象。高速のため,人的被害が大きくなる場合が多く,1991年に長崎県で発生した雲仙普賢岳の噴火で43名が死亡する事件が起きています。
次の写真は,雲仙普賢岳噴火による火砕流によって被災した大野木場小学校です。現在は被災遺構として保存され,隣には雲仙普賢岳の監視を行う「砂防みらい館(大野木場砂防監視所)」が建てられています。
大野木場小学校跡
・溶岩流…地下のマグマが溶岩として地表に流出したもの。粘性が高くても低くてもほとんどの場合は人が歩くよりも遅いので,死者が出るような被害が出ることはめったにありません。ハワイのマウナロア山から,溶岩がゆっくりと地面を流れていくような映像を見たことはありませんか。まさにあれが溶岩流です。
・火山泥流…降り積もった火山灰が雨によって泥流となり流下したり,雪の積もった冬に噴火することで雪が解け,火山泥流となったりするものなどがあります。秒速10~40mと非常に高速。
・火砕サージ…火砕流に似ているが,火山ガスの比率が高いため,火砕流よりもより高速に流下することが多い現象で,時速100kmを超える場合もあります。有名なイタリア,ポンペイの遺跡はヴェスヴィオ火山の噴火に伴う火砕サージと火砕流によって住民数千人が死亡したといわれています。逃げ遅れた姿のまま石化した人々の遺体が発掘され,話題となっているわけですが,市民の死因は火山灰に埋もれたわけではなく,火砕サージによる高温のガスを吸い込んだことによって肺が焼け,窒息死したのちに,火山灰が厚く降り積もり,地中に埋没したそうです。
・水蒸気噴火…マグマによって地中の水が温められ,大量の水蒸気に変わることで体積が膨張し,急激に山体内部の圧力が高まって爆発的な噴火を起こす現象のこと。火山の噴火には大きく分けてマグマ噴火と水蒸気噴火があり,水蒸気噴火では火山灰や火山礫などが爆発に伴って噴出するものの,溶岩は噴出しません。「噴火」と聞くと溶岩がドロドロ流れ出てくるイメージが強い人が多いですが,火山の噴火ではこの水蒸気噴火も割合としては高いです。
・火山礫…直径2mm以上64mm未満の火山岩片。要するに火山から出てきたちっちゃい石ころ。
・火山灰…直径2mm未満の細粒の火山砕屑物。大量に噴出した場合,農作物に付着し,光合成を阻害して,農作物が枯れたり,出荷直前の野菜の商品価値がなくなったりと,農業に大きな被害を与えたりします。偏西風で東側に飛ぶ,というのが模試では頻出。降灰量が多い場合は,曇天のようになり,飛行機が飛ばなくなる場合まであります。
鹿児島県の桜島では毎日のように噴火によって降灰がみられ,鹿児島市内の道路には毎朝うっすらと火山灰が積もっています。
以下はchiriが以前に鹿児島を訪れた際の写真です。
驚きだったのは火山灰回収専用の黄色い袋が,コンビニやスーパーなどで不燃ごみ用の袋たちと並んで普通に売られており,街中の至る所にゴミ捨て場ならぬ,火山灰捨て場があり,ゴミ収集車ならぬ,火山灰収集車があったことです。
毎朝,鹿児島市内の人々が道路や軒先に積もった火山灰をほうきで掃く姿は日本有数の活火山である桜島を誇る鹿児島の特徴的な光景です。
桜島の噴火の様子
・火山ガス…マグマの中の揮発成分が地表に噴出したもの。毒性を持つ成分が含まれている場合も多く,吸い込んだことに気づかず,中毒死することもあります。
大切なのは,空気よりも密度が高く,重いためにくぼ地にたまりやすいということ。過去にも観光地で観光客が死亡する事故が多発しているため,火山の火口や各地にある地獄谷的なところに出向く際は十分注意しましょう。
※火山砕屑物…要するに火山から出てきた固体。溶岩や火山灰など。
火山に関してはこれくらいで十分だと思います。
火山帯や火山フロントについては,日本の地形で詳しく学習します。
今日のまとめです。
火山といえば,カルデラ湖。形は丸!
溶岩の粘り気が大きく,温度が低いほうから,溶岩ドーム,成層火山,楯状火山。
火山灰は偏西風で東へ飛び,農作物をダメにする。
次の授業では,沖積平野-扇状地・氾濫原・三角州について学習します。
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