サンゴ礁地形(裾礁・堡礁・環礁)
2020/04/22
さて,前回は沈水海岸(リアス海岸・フィヨルド・エスチュアリ)について学習しました。
今日はサンゴ礁についてです。
いきなりですが,「Repeat after me!」「裾礁(きょしょう)!堡礁(ほしょう)!!環礁(かんしょう)!!!」
はい,10回言ってください。
「裾礁!堡礁!!環礁!!!」「裾礁!堡礁!!環礁!!!」
いや,冗談抜きで。
「裾礁!堡礁!!環礁!!!」「裾礁!堡礁!!環礁!!!」「裾礁!堡礁!!環礁!!!」「裾礁!堡礁!!環礁!!!」「裾礁!堡礁!!環礁!!!」「裾礁!堡礁!!環礁!!!」「裾礁!堡礁!!環礁!!!」「裾礁!堡礁!!環礁!!!」
はい,ありがとうございました。
馬鹿らしいと思うかもしれないけど,本当にやってくれたら,もう忘れないでしょ。
覚えられるなら覚え方なんてどうでもいいわけです。
本題に入りますが,サンゴ礁は3つの種類しか存在しません。
それがこの裾礁,堡礁,環礁です。
しかもでき方が必ずこの順番で裾礁の後,いきなり環礁になるということは絶対にありません。
2年生の模試などでは,この形成過程の順番が問われることもよくあります。
カルスト地形の「ドリーネ・ウバーレ・ポリエ」もそうですが,英語や古典のように,ときには地理も声に出して,覚えるべきことは丸ごと覚えてしまうというのも必要だと思っています。
さて,それでは下の図を見てください。
モデル図にするとこんな感じです。

サンゴ礁の形成過程
サンゴ礁は3つの種類のでき方,特徴,具体例を押さえてしまえばそれだけなので,簡単な単元です。
さくっと終わらせましょう。
そもそも,サンゴって何だか知っていますか?
サンゴとサンゴ礁の違いって知っていますか?
サンゴとは生き物(動物)なんです。
そのサンゴが作り出す地形をサンゴ礁と呼びます。
ちなみにサンゴには造礁サンゴと宝石サンゴの2種類が存在します。
高校の地理Bで登場する「サンゴ」とは「造礁サンゴ」のことを指しますので,一応,区別しておいてください。
宝石サンゴとはこんなやつです。
高知沖産血赤珊瑚の拝見・原木・置物/艶出し加工済み/黒檀台製作中/『宝石サンゴ』
宝石サンゴは例えば赤くてお金持ちがオブジェで持ってて何百万円もする,みたいなイメージがあると思います。
最近で言えば小笠原諸島周辺でどこの国とは言いませんが,大量の船が宝石サンゴを違法操業で密漁していた,というニュースが話題になったこともありました。
ただ,この宝石サンゴは造礁サンゴと異なり,比較的水深が深い海域で生息していたり,体内に褐虫藻を共生させなかったりと,性質が大きく異なります。
そして宝石サンゴは最初に確認した,裾礁・堡礁・環礁などの地形は作らないので,勘違いしないようにしてください。
(こんな細かい宝石サンゴのことは当然ながら入試では出ないのですが,日常,みなさんが目にするサンゴは宝石サンゴの場合も多いので,chiriはこうした身の回りのことも大切にしながら地理を学んでほしいなと思っています。)
さて,それではモデル図とともに,具体的に裾礁から順番に見ていきましょう。

裾礁
上の図で「基盤岩」とあるのは,いわゆる「島」(多くの場合は火山島)のことです。
サンゴが成長するうえで,当たり前ですが,サンゴは海の中をプカプカ浮かんでいるものではないですよね?
陸地の部分とくっついていないとサンゴは成長していけないわけで,最初は島の周りを縁取るようにサンゴが発達していきます。
この段階を裾礁と呼びます。
「裾」というのは訓読みで「すそ」と読みますね。
すそとは物の端という意味です。
島の端に発達するから裾礁。
裾礁の具体例としては日本の沖縄です。
日本には裾礁しか存在しませんのでご注意を。
さて,次に堡礁です。

堡礁
裾礁から堡礁へと発達していくためには上の図にもあったように,海面上昇が必要になります。
もう河岸段丘や海岸段丘の内容で理解できていると思いますが,ここでいう「海面上昇」とは,北極や南極の氷が融けて文字通り海水面が上昇する場合と,島(基盤岩)が地殻変動によって沈降する場合です。
裾礁と堡礁のモデル図の間が想像できますか?
当然ながら,海面上昇や島の沈降は瞬間的に何十cmも何mも起こるものではありません。
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長い年月をかけて少しずつ島とサンゴが海の下に沈んでいくわけです。
この,海の中にサンゴが沈んでいく,というところがポイント!
サンゴは動物と述べましたが,造礁サンゴは体内に小さな藻(共生藻)を住まわせており,藻が光合成をして生み出したエネルギーをサンゴが得ることでサンゴは大きく成長していきます。
つまり,動物なんだけど,植物のような特徴を持っているのです。
そうすると,サンゴが海面上昇によって沈んでいくとき,何が起こるかわかりますか?
サンゴが存在する位置が海の中で深くなればなるほど,日光が届きにくくなりますね。
これではサンゴ(の中の藻)が光合成ができません。
エネルギーが得られなくなるとサンゴにとっても生命の危機なので,サンゴは日光がよりたくさん得られるように上へ上へと伸びていくのです。
するとモデル図からもわかるように,サンゴ礁は海底とつながったまま島との間に水域が生まれるようになります。
この海域を礁湖(ラグーン)と呼びます。
完全に外海と切り離されていなくてもラグーンと呼びますので,サンゴ礁がモデル図でも切れていることはお気になさらず。
そういえば,ディズニーシーでもマーメイドラグーンってゾーンがありましたね。
映画の「リトル・マーメイド」が舞台のやつ。
昔生徒がこんな質問をしてきたことがありました。
生徒:「マーメイドラグーンと堡礁のラグーンって同じですか?」
chiri:「そんなことまで知らん!(笑)」
chiriも少し調べたけどわかりませんでした。
なんとなく言葉の雰囲気だけでネーミングされてる気もしますが…
ディズニーシーにはラグーンのデザインとかあるのでしょうか?
リトル・マーメイド ダイヤモンド・コレクション MovieNEX [ ジョディ・ベンソン ]
誰か確認できた人がいたら,chiriまで教えてください(笑)
というわけでこれが堡礁。
堡礁の具体例で最も有名なのがオーストラリアのグレートバリアリーフです。
これはテレビや雑誌で目にしたことがある人も多いと思います。
最近はこんなのも話題になりましたね。
グレートバリアリーフは世界遺産で,世界一有名なサンゴ礁地形といってもよいと思います。
ただし,それゆえにサンゴ礁の形態としては最終形態の「環礁」と勘違いする人も多く,模試でもこうしたひっかけ問題がよく出題されます。
グレートバリアリーフは日本語で「大堡礁」と表記されます。
これを覚えておけば,グレートバリアリーフは堡礁,と間違えずに答えられるはずです。
さて,最後は環礁。

環礁
でき方は裾礁から堡礁の場合と同様です。
さらに海面上昇が進み,真ん中の島は完全に海面下に沈んでしまい,周りのサンゴ礁のみが輪っか状に残るので環礁。
環礁の具体例として有名なのは過去に水爆実験が行われたマーシャル諸島にあるビキニ環礁やフランス領のムルロア環礁,インド洋に浮かぶモルディブ,地球温暖化で島が水没しそうなツバルなどが有名です。
それぞれ地図帳で確認しておきましょう。
ちなみにみなさんが学校で使っている資料集にはだいたい,サンゴ礁の世界における分布が載っていると思います。
この分布をみると,基本的にサンゴ礁は赤道付近の暖かい海域に発達していることがわかります。
みなさんもすでにイメージがあると思いますが,サンゴは水温25~29℃くらいの海水温度で水深は20m以下の比較的浅い海域で生育しやすいとされています。
サンゴは水温が低すぎても高すぎても生きていけません。
近年の地球温暖化でサンゴが死んでしまい「白化現象」と呼ばれる事態が世界各地で深刻化していることも環境問題の1つとしてよく話題に上がるので,知っておいてもいいかもしれません。
さて,今日のポイントは
サンゴは裾礁→堡礁→環礁の順に発達
→成長のためには暖かく,浅い海,光合成が必要!
次回は氷河地形を学習します。
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