乾燥地形(外来河川,ワジ,カナート・フォガラ,オアシス)
2020/04/29
さて,前回は氷河地形について学習しました。
今回は乾燥地形についてです。
この乾燥地形という単元は正直言ってそんなに学習内容がありません。
気候の乾燥気候とか,農業のオアシス農業の部分でもほぼ同じような内容がもう一度出てきます。
そのための予習,くらいのつもりで軽く読んでもらえればOKです。
さて,次の言葉は乾燥地域(気候の単元で改めてきちんと学習しますが,ざっくりとらえるなら砂漠)において出てくる用語の名称です。
「外来河川」,「内陸河川」,「ワジ(涸れ川)」,「地下水路(カナート・フォガラ)」,「オアシス」,これら5つの言葉を聞いて,どんな地形もしくはどんなもの,なのかある程度想像できますか?
みなさんに一番馴染みがあるであろう,「オアシス」から確認しましょう。
オアシスとは砂漠の中でもピンポイントでその場所だけ水が湧き,緑が生い茂って集落や都市が成立しているところです。
これはおそらくみなさんのイメージ通りですね。
構造平野の単元で学習したエアーズロック(ウルル)に近い,オーストラリアのアリススプリングスやアフリカにあるマリのトンブクトゥ(ラクダの背に荷物を載せ,サハラ砂漠の中で交易活動を行う隊商の主要都市)などはこのオアシスが発祥の都市とされています。
砂漠の中に人が住めるところ(エクメーネ)はオアシスくらい,というイメージが強いかもしれませんが,そうでもありません。
もう一つは人間が長い歴史の中で人為的に人の居住可能な地域を作った例です。
こうした地域に必要不可欠なのがカナートと呼ばれる地下水路です。
残念ながらここに掲載できる地下水路(カナート)の写真を確保できませんでした。
手持ちの資料集などに載っている写真を見てください。
モグラが掘った穴がずっと続いているように見えますね。
当然ながら,水があるのはこの穴たちを繋いだラインの地下。
ではなぜ,こんなにもたくさんの穴が開いているのでしょうか。
次のモデル図を見てください。

カナート or フォガラの断面図
この地下水路は数千年前から人間の手によって作り出されたもので,近代的なコンクリートの土管がずーっと地下に埋まっているというような日本の水道管とはわけが違います。
そのため地下水路内部は壁面が土なわけで,時々崩れたり,ごみが詰まったりして水の流れが悪くなります。
こうした際のメンテナンスに人間が縦穴から地下水路へ降りるための穴なのです。
あるいは最初に地下水路を掘るときの工事用。
一人がずーっと目的地に向かって横穴を掘るよりも,みんなで同じ深さまで縦穴を掘ってそれを横穴でつないだ方が圧倒的に工期が短くて済むので。
こうした地下水路は乾燥地域の各地にみられ,イランではカナート(長いもので全長80km,深さ300mに達するものもある),北アフリカ(リビア・アルジェリア・チュニジアなど)ではフォガラ,アフガニスタンなどではカレーズと呼び,地域によって名称が異なります。
はい,すぐ地図帳で確認してくださいね。
ただし,地理Bのセンター試験で出題されるのはカナートとフォガラだけ。
よくこの二つの地域と名前の組み合わせを逆にしたひっかけ問題が出題されるので注意しましょう。
私立大学を地理で受験する場合にはアフガニスタンのカレーズまで覚えておけばOKです。
また,地理の資料集や受験参考書にもよく載っているこのモデル図を見ると,「地下水路の上の部分が崩れて落ちてくるじゃん。」と勘違いする高校生がよくいます。
このページの後半でも説明しますが,「砂漠」というのはみなさんがよくテレビで目にするようなサラサラの砂でできた砂漠ばかりではありません。
「乾燥地域」とか「砂漠」と聞くと,みんな公園の砂場のでかいバージョンくらいにしか思ってない人もいるのですが,それだと掘っても掘っても砂が落ちてくると勘違いして当然です。
「砂漠」といってもしっかり地面を掘ることができるんだ,ということを前提にこのモデル図を見てくださいね。
さて,それではこの地下水路の構造を見ていきましょう。
図の一番下に描かれているのは不透水層です。
洪積台地でも出てきましたね。
粘土などの細かい粒子によってできていて,これ以上下に水を通さない地層です。
左側に描かれているのは山地。
先ほどカナートの長さを少し示しましたが,がっつり砂漠とされるところから,少し離れれば乾燥地域といえども雨が降る場所が存在します。
この山地に降った雨は地下へ染み込み,不透水層まで行きつくと,周りの水と一緒になって標高の低い方へと帯水層(いわゆる地下水)を形成します。
この帯水層にぶつかるように,標高の低い方から山地側へと地下で横穴を掘るのです。
帯水層と掘った横穴がぶつかれば,一気に地下水路を水が流れていきますね。
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これがカナート・フォガラ(地下水路)の仕組みです。
そして水が湧きだす地表部分では小麦やナツメヤシ,綿花といった作物が栽培でき,集落も成立するのです。
これがオアシスじゃなくても集落が成立するパターン。
ゆえに,地下水路は地下じゃないと意味がない,地上に水路を作っても意味がないのはわかりますか?
たとえば乾燥地域において地上にはワジ(涸れ川)と呼ばれる普段水の流れていない川が存在しています。
これは数十年とか数百年に1回の頻度で砂漠に大雨が降った場合,水が流れた跡なんです。(目印のない砂漠ではこのワジが交易路として道路のように使われていることもよくあるそうです。)
あるいはそこまで大雨ではなく,ちょっとだけ降った雨は小さな川となるかもしれませんが,その暑さのために海まで到達せず,途中で干上がってしまいます。
これに対して地下水路は集落まで水を蒸発させることなく,かつ冷たいまま水を引くことができるのです。
人間の長い歴史が生み出した努力の知恵の結晶ともいえるのがこのカナート・フォガラなのです。
さて,最後に内陸河川と外来河川について。
内陸河川とは盆地の中などで降った雨が海に到達することなく,内陸湖などにとどまるような河川のことを指します。
具体例としてはアラル海(内陸湖)に注ぐアムダリア川やシルダリア川などです。
これも中央アジア地誌では重要になってくるので,場所だけは地図帳で確認しておきましょう。
もう一つの外来河川とは「外から来る河川」と書きますね。
これは日本語としてよくできているなぁといつもchiriが感じるところです。
なぜかというと,詳しくは乾燥気候の単元で学習しますが,砂漠の定義というのはある一定の地域に降る雨の量よりもその地域で蒸発する水の量のほうが多い地域を指します。
つまり総降水量<総蒸発量という関係です。
だからこそ,普通,砂漠には河川が存在せずワジ(涸れ川)となっているのです。
それにもかかわらず,砂漠に本来あったらおかしい河川が存在するということは,その河川の水は砂漠で降った雨ではない,ということなのです。
そのため,外来河川とは「異なる気候環境に水源をもち,乾燥地域を流れる河川」といった辞書的な説明がよくされます。
つまり,熱帯や温帯気候で降った雨が河川となって砂漠の中に流れているというパターンです。
世界一有名な外来河川はエジプトのナイル川。
地理Bのセンター試験や模擬試験でも外来河川が出るとすれば7~8割はナイル川が例として出題されます。
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それ以外だとメソポタミア文明を生み出したティグリス・ユーフラテス川,インダス文明を生み出したインダス川,アメリカの世界自然遺産グランドキャニオンを作り出したコロラド川などです。
はい,地図帳で確認よろしく。
さて,こんな感じで最初に示した5つの言葉を説明しました。
しっかり理解できましたか?
最後に砂漠の説明です。
砂漠には砂砂漠・礫砂漠・岩石砂漠という3種類が存在します。
次の写真で違いを見てください。

砂砂漠

礫砂漠

岩石砂漠
みなさんは「砂漠」と聞くと,どうしてもテレビで見るサハラ砂漠の砂がサラサラな感じを想像すると思いますが,実は砂砂漠は世界の砂漠の約20%ほどしかありません。
実はサハラ砂漠も70%は礫砂漠から成っています。
砂漠の種類やその具体例はほとんど入試では出題されません。
ただ,みなさんが一般的に「砂漠」だと思っている砂砂漠は実は砂漠の世界でメジャーじゃない,ということはせっかく地理を学ぶなら,知っておきたいですよね。
地理Bのセンター試験や模擬試験でよく出題されるのは,砂漠の成因(でき方),つまり,なぜ特定の地域では総降水量<総蒸発量となるのか,という部分です。
これについては気候の乾燥帯の部分で詳しく学習しますので,心に留めておいてください。
ということで,今日のポイントです。
外来河川…異なる気候環境に水源をもち,乾燥地域を流れる河川
→ナイル川,ティグリス川,ユーフラテス,インダス川,コロラド川
内陸河川…海へと流れず,内陸湖へそそぐ河川
→アムダリア川,シルダリア川⇒アラル海へ
ワジ(涸れ川)…普段流水のない河川
地下水路…山麓から水を引いた灌漑水路
→イランではカナート,北アフリカではフォガラと呼ぶ
オアシス…砂漠の中にある湧水ポイント
→小麦や綿花,ナツメヤシなどを栽培
次回はカルスト地形について学習します。
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