ケッペンの気候区分-雨温図の判別方法-
2020/04/22
さて,前回は海流について学習しました。
今回はケッペンの気候区分とそれに対応した雨温図の読み方を学習します。
強調して言っておきますが,毎年の生徒たちが地理が苦手になり,地理が嫌いになるのはココです笑
気候記号が覚えられなかったり,雨温図やハイサーグラフから気候区分が判別できなかったりして,みんなフェードアウトしていきます。
そうならないように,わかりやすく解説しますので,しっかりついてきてください。
そもそも,気候区分とは何か?
地図帳や資料集にもカラフルに着色された気候区分の地図が載っていますね。
これを最初に作った人はどうやってこの色分けを考えたのでしょう?
これを考えた人がドイツ人の気候学者である,ケッペンという人です。
ケッペンは「植生」に着目します。
植生とはわかりやすく言えば,植物の生え方,そしてそれが作り出す景観,というようなものです。
はじめに,次の図を見てください。

ケッペンの気候区分
数学の場合の数で習う樹形図みたいですね。
この図に沿って,具体的な雨温図と照らし合わせながら,1つずつ気候区分を確認していきます。
しっかりついてきてくださいね。
さて,まず初めに,ケッペンは世界の気候を樹林気候と無樹林気候という2つに大きく分類しました。
これはケッペンが植生(≒植物の生え方)に着目したと先ほど述べたように,目の前に木が生えているかいないか,というのは景観においても大きな差ですよね。
それでは樹林気候から見ていきましょう。
ケッペンは樹林気候を熱帯(A),温帯(C),亜寒帯(D)(←冷帯とも)の3つに大きく分類しました。
まず,熱帯(A)は最寒月(文字通り1年間で最も寒い月)の平均気温が18℃以上の地域として定義されます。
日本に住んでいれば,真冬でも18℃を気温が下回らない,と思えば,そりゃあ暑いよね。
これが熱帯です。
次の雨温図を見てください。

シンガポールの雨温図
赤道直下に位置するシンガポールのものです。
2018年6月には北朝鮮の金正恩氏とアメリカのトランプ大統領が歴史的な米朝首脳会談を行った場所でもありますね。
それはさておき,グラフの18℃のところに線を引きます。

シンガポール雨温図の判別
シンガポールの場合,最寒月は1月かな。
12月でも構いません。
要は最寒月(熱帯の場合は12個すべての点)が18℃以上なら,この時点で即,A。
熱帯と決まるのです。
気候区分というのは基本的にアルファベット2文字の組み合わせ(気候記号といいます。)で表現します。(時々3文字のものもありますが,それはまた後ほど。)
シンガポールの場合,先ほどの作業で1文字目はAと決定しているので,次に2文字目を決めます。
2文字目を決めるには乾季があるかないか,で決定します。
もう一度雨温図を見てもらって,棒グラフで表現されている各月の降水量が,どの月も多いことがわかりますね。
特に乾季(雨がほとんど降らない時期)というのはないので,この場合,2文字目はfです。
必ず小文字で書くので注意しましょう。
定期テストなどで書き間違えないように。
fというのはドイツ語で年中多雨を意味するfeuchtという単語の頭文字から来ています。
なぜドイツ語かって?
そうです,これを最初に考えたケッペンがドイツ人だから。
こればっかりはしょうがないよね,そのまま覚えましょう。
じゃあ1文字目のAはどうやって決まってるのかって?
これは下の図を見てください。

気候記号の1文字目
地域差はありますが,地球規模でざっくりと気候区分を見ていくと,赤道から北極・南極に向かって離れていく順に,熱帯(A)→乾燥帯(B)→温帯(C)→亜寒帯(D)→寒帯(E)と分布しているのです。
だから1文字目は単純に赤道からA→Eへとアルファベットを振っただけ,と思ってください。
はい,話を戻します。
シンガポールの気候記号はAfとなり,日本語では熱帯雨林気候です。
いわゆるみんながイメージする熱帯雨林の気候は
1年中こんな風に気温が高くて雨が多いからね。
次にもう一つ雨温図を見てください。

カルカッタの雨温図
カルカッタ。
どこかわかりますか?
インドの東側です。
昔はコルカタと呼ばれていたところ。
さて,シンガポールと同様に気候記号を判別してみましょう。
18℃に線を引いて,最寒月は1月で20℃くらいなので,やはり1文字目はA,熱帯です。
次に降水量を見て乾季に着目すると,1~3月,11~12月くらいに極端に雨が少なくなっていることがわかります。
これが乾季です。

カルカッタ雨温図の判別
冬に乾季はドイツ語でwinter trockenと表記するので,頭文字のwを2文字目に使います。
まあ,英語のウィンターと同じです。
発音はヴィンターと濁ります。
気になる人はネットでドイツ語を発音してくれるページで聞いてみてください。
最近はみんな高性能の電子辞書持ってるから,それでも聞けるかな?
(最近の電子辞書ってカラーでタブレット型になるやつもあるらしいですね。ジェネレーションギャップ感じる…笑)
なのでカルカッタはAwとなり,気候記号ではサバナ気候といいます。
テレビとかで「アフリカのサバンナをチーターが…」とかってよく聞くはずです。
(今一番アフリカに行ってるのはイモトアヤコか千原せいじさんでしょうね…)
一般的に使われるサバンナと地理で出てくるサバナは基本的には同じだと思ってOK。
このように,熱帯(A)はAf(熱帯雨林気候)とAw(サバナ気候)の2つに分かれます。
詳しい樹形図にすると,こんな感じ。
ちなみに丸数字と雨温図の丸数字が対応しています。

熱帯の分類
厳密にはAfとAwの間にAm(弱い乾季のある熱帯雨林気候 とか, 熱帯モンスーン気候 と呼ばれる)というのがありますが,正直,これは覚えてなくても,わかってなくても,大学受験では必要がないので,省きます。
以上で熱帯は終了。
次に温帯です。
温帯はこのように分類されています。

温帯の分類
さきほど出てきた冬に乾季とは逆に夏に乾季となる気候もあります。
夏に乾季はドイツ語でsommer trocken なので,頭文字のsがつきます。
簡単ですね。
ちなみに熱帯にAsという気候記号はありません。
なぜ,Awはあるのに,Asはないのか,というのは,もう少し先の雨季と乾季が生まれるメカニズムの授業で確認しましょう。
さて,では③の雨温図から見ていきます。

秋田市の雨温図
日本の秋田県秋田市です。
なまはげがいるところ。
温帯は一番最初に示した樹形図にあるように,最寒月が-3℃以上18℃未満の地域が該当します。
そのため,今度は-3℃と18℃に線を引き,最寒月が2本の線の間にあるからC(温帯)です。
次に降水量に着目し,目立った乾季がないからf。
この作業はAfの時と同じです。
だがしかし!!
大学受験で登場する(覚えるべき)12の気候記号のうち,1文字目がC,2文字目がfとなり,Cfと続いた時だけ,3文字目を決定する必要があるのです。
(厳密にはDfaとかDfcとか書いてある地図帳もあるかもだけど,受験には全く必要ないので無視です。無駄なことに悩まされて頭の中が混乱するのは避けましょう。このホームページの最初の趣旨通り,とにかく受験に必要な部分を最小限かつ要領よくマスターしてください。)
Cfと来たら,今度は22℃に線を引きます。
そして今度は最暖月(1年間の中で最も平均気温が高い月)に着目し,この最暖月が22℃以上だとa,22℃未満だとbとします。

秋田市雨温図の判別
Cfaを温暖湿潤気候といいます。
日本の大部分(北海道以外)はこれです。
ちなみに④はロンドンで,同様の手順を踏むとCfbになり,これは西岸海洋性気候と呼ばれます。

ロンドンの雨温図

ロンドン雨温図の判別
だんだん,気候記号と日本語名のセットが覚えられなくなってきたことでしょう。
ただし,この気候記号と日本語名は最低限覚えておかないと,模試や受験では話になりません。
先ほども言ったように全部で12個しかありませんので,これくらいは頑張って覚えましょう。
英単語を1900個覚えることを思えば,雲泥の差のはずです笑
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余談ですが,chiriは受験の時,ターゲットとともに,こちらを使いました。
簡単な文章も載っているので,どのような文脈で使われるのかも含めて理解できるからオススメ。
さて,このaとbの違いですが,夏の一番暑い月の平均気温が22℃以上という状況は日本に住んでいれば,「まぁ,当たり前かな。」という感覚でとらえられるはずです。
月の平均気温とその日の最高気温は違いますが,8月とかだと,30℃以上になる真夏日とか,夜も25℃を下回らない熱帯夜とか毎日ニュースで目にするよね。
月の平均気温だと秋田でも25℃くらいあるわけです。
一方のロンドンは夏の一番暑い時期でも平均気温が19℃ってなかなかだと思わない?
全然涼しいよね。
chiriも学生の頃,夏にロンドンに行ったことがありますが,よく日本のガイドブックに書いてあるように,夏のロンドンは長そでシャツ一枚が最適なのです。
もちろん暑い日もあるけど,毎日半そでのTシャツ1枚じゃ肌寒いときが結構あります。
(chiriも初めての海外旅行で嬉げにこれを買って行きました笑)
こう考えると温帯でもCfaとCfbで夏の気温が全然違うのが少しはイメージできるかな?
a→夏暑い,b→夏涼しい,というイメージで理解してください。
これは気候の3要素-気温でも学習した年較差にも直結します。
aだと気温のグラフの一番上の点(最暖月)が上にあるから,グラフ全体の縦幅(最暖月と最寒月の平均気温の差)は長くなって年較差は大きくなるし,bだと気温のグラフの一番上の点がそんなに上に上がらないからグラフ全体の縦幅はそんなに長くならず,年較差は小さくなるよね。
大陸の東岸では年較差が大きく,大陸の西岸では年較差が小さいってやったやつです。
ちなみにCfaは大陸の東岸(アジアとか,アメリカ大陸の東側とか)に主に分布し,Cfbは大陸の西岸(ヨーロッパとか)に主に分布します。
だからCfbは「西岸」海洋性気候なんだよね。
(ちなみに「海洋性」は偏西風のところでもその特徴を学習したよね)
こんな風に,やみくもにただ暗記するのではなく,これまでに学習したことを論理的に結び付けて理解していけば,正しく覚えられるし,納得がいくはずです。
さて,次は⑤のローマ。
イタリアの首都ですね。

ローマの雨温図
ローマは世界的な観光地でその観光客を狙ったスリも多いので,気をつけましょう。
これまでと同じように-3℃と18℃に線を引き,最寒月が2本の線の間にあるからCです。
降水量は夏に少なくなっているのでCsとなり,地中海性気候と呼ばれます。
ヨーロッパの地中海周辺はみんなこんな感じで,夏に雨が降らないからです。
ちなみに入試ではこのCsが一番重要だとchiriは思います。
理由は追々わかってくるはずです。
温帯の最後は⑥のチョンツー。
中国の内陸のほうです。

チョンツーの雨温図
もう,だいぶ慣れてきたと思いますが,同様の作業をして,今度は冬に乾季があるので,Cwとなります。

チョンツー雨温図の判別
Cwはシンプルに温暖冬季少雨気候と呼ばれます。
全部の気候記号がこの気候と乾季の組み合わせの日本語名だったら覚えるのが楽なのにね。でもこれは昔の日本のえらーい地理学者の人たちが決めたことなんだろうから,chiriを恨まないように。
ちなみにCsはまれに私大の入試だと温帯夏季少雨気候と表記されることもあります。
まぁ,メカニズムがわかってくれば,大丈夫だよね。
さて,最後に亜寒帯(D)。
亜寒帯はDfとDwの2つだけです。

亜寒帯の分類
亜寒帯の定義は最寒月の平均気温が-3℃未満なので,⑦のシカゴで見ると,こうなります。
アメリカ第3の都市ですね。

シカゴの雨温図
最寒月がギリギリですが,-3℃未満で,降水量も一年中一定して降っているので,乾季なしです。

シカゴ雨温図の判別
Dfは亜寒帯湿潤気候と呼ばれます。
一方で,⑧のハルビンは冬に乾季があるため,Dwとなります。
日本語名は亜寒帯冬季少雨気候です。
亜寒帯はDfもDwもそのままの日本語表記なのでわかりやすいと思います。

ハルビンの雨温図

ハルビン雨温図の判別
日本の初代総理大臣伊藤博文は当時満州だったハルビンの駅で暗殺されたと中学校の歴史で学習しましたか?
今は中国の東北部に位置しています。
さて,これで樹林気候はおしまいです。
次に木の生えない無樹林気候の説明に移りましょう。
木の生えない理由は大きく分けて2つあります。

ケッペンの気候区分
雨が少なすぎて,気が育たないor寒すぎて木が育たない,です。
言われれば理解はできると思います。
では乾燥帯から見ていきましょう。

乾燥帯の分類
乾燥帯にはBSとBWの2つの気候区分が存在します。
いずれも2文字目が大文字であることに注意してください。
BSのSはドイツ語でステップを意味するSteppen,BWのWは砂漠を意味するWusten の頭文字からそれぞれきています。
夏と冬の乾季sとwとは違いますので,小文字と大文字を正しく書き分けましょう。
さて,では実際の判別はどうするかというと,⑨のダカールの雨温図を見てください。
砂漠の中を走るダカールラリーが開催される都市ですね。

ダカールの雨温図
A・C・Dの判別の時のように,-3度と18℃に線を引いて,最寒月を見ようとしてもよいのですが,その前に,「いかに言っても雨が少ないなぁ」という印象を受けるはずです。
細かい計算式もありますが,入試では不要なので,覚える必要はありません。
大まかにいうと,年間の降水量が500mm未満だと多くの場合,乾燥帯に分類されます。
ダカールの降水量の棒グラフを仮に積み上げて一本にしたとしても,8月9月で350ミリ,7月を足しても400ミリ,6月10月を足しても450ミリくらいになるというのは読み取れますね。
なのでダカールはBS(ステップ気候)と判別してOKです。
ちなみに乾燥帯の定義は年間降水量<年間蒸発量です。
意味わかりますか?
1年間にその地域に降る雨の量より,1年間にその地域から蒸発する水の量のほうが多いということです。
だから「乾燥」帯なんだよね。
この年間降水量<年間蒸発量という状態になりやすい1つのラインが年間降水量500mm未満ということです。
そもそも降る雨の量が少なければ,蒸発量の方が上回りやすいからね。
ちなみに500mmの半分の250mm未満であれば,砂漠気候に分類してOKです。
⑩は砂漠気候(BW)のカイロ。

カイロの雨温図
カイロは世界のBWの地域の中でも特に雨の少ない地域だということを知っておくと,問題を解くうえで便利だと思います。
いずれにしても,入試でBWとBSを厳密に判別できないと解けない,という問題はほとんどないので,あくまで500mmと250mmが1つの目安,というくらいでとらえておけばOKです。
では最後に寒帯(E)。
寒帯も以下のように2つに分類されます。

寒帯の分類
ET(ツンドラ気候)のTはドイツ語でTundren,EF(氷雪気候)のFは永久凍結を意味するFrostesから来ています。
こちらも乾燥帯と同様に2文字目も大文字なので,注意しましょう。
さて,⑪のETの雨温図を見てみましょう。
アラスカにあるバローです。
ETではよく出てきます。

バローの雨温図
この判別方法も,-3℃と18℃に線を引こうとしたときに,「いやいや,寒すぎるっしょ」という第一印象を抱くのではないでしょうか。
冬の寒さも-25℃とやばいですが,Dwで出てきたハルビンをもう一度見てみてください。
冬の最低気温は-20℃とバローとそんなに変わりません。
みんなはどうしても最低気温を見て,「やべー,寒すぎ,意味わかんねー」という方に意識が向きがちですが,正直-25℃も-20℃も現地にいたら意味わからないレベルで寒すぎて大差ないはずです。
それよりも着目するのは夏。
バローの夏の平均気温が5℃くらいってめちゃくちゃ寒いよね。
ハルビンはそれでも20℃以上まで夏の気温が上がっています。
そのため,EとDの境界は,最暖月の平均気温が0℃以上,10℃未満と決まっているのです。

バロー雨温図の判別
最暖月の平均気温が10℃以上なら亜寒帯(D),0℃未満ならEFとなります。

D(亜寒帯)とE(寒帯)の判別
最後のEFは南極にある昭和基地⑫です。

昭和基地の雨温図
これも先ほどと同様に考えると,最暖月が0℃を下回っているので,EFだとわかります。

昭和基地雨温図の判別
というか,1年中0℃を上回らないってやっぱりすごいよね。
だから氷と雪の世界で「氷雪気候」。
ちなみにEFはグラフの形が特異すぎるので,入試にはまず出ません。
ただ,EFは現在の大陸氷河が分布する地域と重なるということは確認しておきましょう。
氷河地形でも学習しましたが,現在地球上で大陸氷河があるのはどこでしたか?
そうです,南極とグリーンランドだけでしたね。
これももう一度地図帳で確認しておきましょう。
ということで,以上でケッペンの気候区分12個の分類終了です。
判別方法をもう一度まとめます。
雨温図が出てきたら-3℃と18℃に線を引き,最寒月で,A・C・Dを決める。
2文字目は降水量の乾季があるなしを見て,f・s・wを決める。
Cfと続いた場合のみ,最暖月22℃に線を引き,以上ならa,未満ならb。
Bは年間降水量が250mm未満ならBW,250mm以上500mm未満ならBS。
Eは最暖月が0℃以上10℃未満ならET,0℃未満ならEFです。
さて,次はハイサーグラフの仕組み,判別の仕方を確認していきましょう。
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