熱帯気候の特徴(熱帯雨林気候,サバナ気候)
2020/04/30
さて,前回は雨季と乾季が生まれるメカニズムについて学習しました。
今回からは,ケッペンの各気候区分についてA~E気候を順番に学習します。
まず熱帯からです。
熱帯には主に2つの気候区分がありました。
気候記号と日本語名ですぐに答えられますか?
そうです,熱帯気候(Af)と,サバナ気候(Aw)でしたね。
ちなみに細かく分けると熱帯モンスーン(弱い乾季のある熱帯雨林)気候(Am)もありましたが,AmはAfと一緒に熱帯雨林気候と分類されることも多く,その差を判別できたりする必要もないので,熱帯はAfとAwという認識でOKです。
次の白地図を見てください。

白地図
この白地図を熱帯気候(Af)は赤色,サバナ気候(Aw)はピンク色に色分けできますか。
今はできなくても,大学入学共通テストまでにはしっかりできるようになってくださいね。
白地図集を一冊買って,たくさんコピーしたり,インターネット上で公開されている無料の白地図を自宅のプリンターで印刷したりして,何度も色鉛筆やマーカー等で大まかに色塗りをする練習をしていきましょう。
ケッペンの気候区分図は画像で覚える!
ことが重要です。ざっくりとで構わないので,頭の中で「この辺は○○色だったから△△気候だな。」と思い出せることが大切なのです。
最初は地図帳や資料集を見ながら,色分けを写してみてくださいね。
さて,色塗りをして熱帯気候の分布に特徴や傾向性はありますか?
個人差はあるでしょうが,chiriとして押さえておいてほしいのは,
・案外,熱帯気候(Af)は面積が小さい,世界の中で当てはまるところは少ない。
・サバナ気候(Aw)は熱帯気候(Af)を南北(上下)で挟むように分布している。
という2点です。
なぜサバナ気候(Aw)が熱帯気候(Af)の南北にあるのかは,
なぜ雨季と乾季が生まれるのかのページで解説しています。重要ですので,しっかり理解しておきましょう。
それではまず,熱帯気候(Af)とサバナ気候(Aw)に共通する特徴を見ていきます。
次の写真の特徴は何ですか?

この写真の特徴は?
「空が青い。」
いえいえ,「土が赤い」です。
熱帯地方にはラトソルという赤色で酸性のやせた(肥沃度が低い)土壌が分布しています。
では質問です。
なぜラトソルは土の栄養分が少ないのでしょう?そしてなぜ赤いのでしょう?
ヒントは熱帯は当然ながら,たくさん雨が降る,ということ。
雨が降る→土壌中の有機物(水に溶ける成分)が溶けて流れていく(溶脱)→水には溶けない鉄やアルミの成分が残る→雨と高温で錆びる→赤い土になる
のです。こうしてラトソルは赤色のやせた土壌になります。
だからこそ,農業には不向きな土地が多く,熱帯地方で行われるのは焼畑農業などであることを改めて農業の単元で学習します。
ちなみに,アルミ分の特に多い土をボーキサイトと呼び,これはアルミニウムの原料になります。
これも鉱産資源の単元で改めて学習します。
さて,質問です。
次の写真に写っているのは何ですか?

この木何の木?
「マングローブ!」
はい,不正解です。
確かに世間一般ではこれは「マングローブ」と認識されていますが,マングローブとは汽水域(海水と淡水が混じりあう水域)に育つ樹木の総称です。
正確には

ヤエヤマヒルギ
写真は沖縄県の東村で撮影したものです。
ヤエヤマヒルギとかメヒルギ,オヒルギといった品種があります。
はい,雑談ですが,汽水域だと海面上だったり,海面下に沈んだりするので,ヒルギの種が海に流れて行ってしまうと思いませんか?
次の写真がヒルギの種だそうで,

ヒルギの種
この種が地面に落ちるとブスッと刺さって満潮になっても種が流されずに大地に根付くのだそうです。

ヒルギの新芽
これが新芽の状態。
完全に脱線してますが,自然界の生き物たちの知恵や技ってすごいですよね。
はい,戻ります。
次の写真はマングローブ林の中に何が写っているでしょう?

マングローブ林の中に…
池ですね。
何の池でしょう。
みなさん,回転寿司で好きなネタは何ですか?
chiriは,はまちです。
はい,無視してください。
ある調査によると1位はまぐろ,2位はサーモン,3位はエビだそうです。
そうです,エビの養殖池です。
主にベトナムやインドネシアなどの東南アジアでエビの養殖池を作るためにマングローブ林が切り開かれ,大きな環境問題になっています。
そこで飼育されるエビのほとんどは日本向けに輸出されるとも言われています。
chiriはもともとエビが苦手なのですが,どうか,次に回転寿司でエビを注文するときは,1皿ごとに「ごめんなさい,東南アジアのマングローブ林…」という想いを胸にして食してください笑
マングローブ林 変わりゆく海辺の森の生態系 (学術選書 079) [ 小見山 章 ]
さて,それでは熱帯気候のうち,熱帯雨林気候(Af)の特徴を見ていきましょう。
ここでも,次の写真を見てください。
この写真の特徴は何ですか?

この写真の特徴は?
「色んな植物が生えている」
「木がワサワサ,緑がいっぱい」
「上から太陽が差し込んでイイ感じ」
「ジメジメして暑そう」
直感的な表現でOKですがこれらを押さえるべき内容として整理すると,
「色んな植物が生えている」
「木がワサワサ,緑がいっぱい」
→多種類の常緑広葉樹からなり,こうした植生を熱帯雨林と呼ぶ。
こうした表現は熱帯気候の代名詞のように教科書や参考書でも使われ,条件反射のように丸暗記しがちですが,大切なのは1つ1つの言葉の意味です。
「多種類」とは「色んな植物が生えている」ということであり,世界の他の地域(他の気候区)には植物が数種類しか生育していないような地域も結構あるということです。(例えば亜寒帯です)
「常緑広葉樹」とは文字通り1年中葉っぱが緑色をしているってことで,つまりは秋に紅葉したり,落葉したりしないってことですね。
広葉樹と針葉樹の違いも中学校で(小学校で?)学習したはず。
面白いのはここからで,ラトソルが肥沃でないことは,実は熱帯の植生が「常緑」であることも大きく関係しています。
なぜ生えている木々が常緑だと,その地域の土壌は肥沃でなくなるのでしょうか?
ここで質問です。
あなたが画用紙にクレヨンでお絵かきしてください,と言われたら,地面は何色で描きますか。
「茶色!」
「おうど色!」
なぜその色を選ぶのですか?
「…小さいころから地面は茶色やおうど色って習ったから」
かもしれません。
では土はなぜ茶色なのですか?
「…」
別の質問をします。
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あなたは,家の庭や校庭を秋に掃き掃除して集めた落ち葉を再び木の根元に捨てたりした経験はありませんか?
あれは落ち葉がのちのち腐って分解され,また木の栄養分になるからです。
つまり,「落ち葉」は「土」になるって知っていますか?
「土(土壌)」のでき方は地域によって様々ですが,その1つは落ち葉が分解されるからです。
日本の土の色って基本的には落ち葉の色でしょ?(日本でも土壌の成因は様々ですが。)
だからみんな,日本人は地面の色を茶色やおうど色で描くのです。
これが熱帯に暮らす子どもたちにクレヨンを渡したら,おそらく地面は赤色に近い色を使うのではないでしょうか。(実際に聞いたことがあるわけではないですが…笑)
こうやって考えると地理って面白いなーと思いませんか?
さてさて,質問に戻ります。
ラトソルが土がやせているもう1つの理由,わかりましたね?
熱帯雨林では常緑であると落葉せず,腐植土が形成されないからです。
「上から太陽が差し込んでイイ感じ」
→熱帯雨林に育つ木々は20~30mにもなり,高いものでは60mになるほどの高木もあるそうです。
60mってビル20階分です。想像できますか?
高校の校舎でも高くて5階建てくらいかな?その4倍です笑
なぜそんなに高い木が育つのでしょう?
「ジメジメして暑そう」
→熱帯雨林気候の特徴は1年中気温が高く,年較差が小さいことです。
植物が育つのに必要なのは水と高い気温だって中学校(小学校?)で習いましたね。
お互いの木々が日光を求めてどんどん,どんどん上に伸びていくのです。
すると,写真のように逆に地表近くは日の光が届きにくくなっています。
熱帯雨林が薄暗いってイメージがない人も多いかもしれません。
正しく学習するって大切ですね。
こうした熱帯雨林のことを南アメリカではセルバ,アフリカや東南アジアではジャングル,と呼んでいます。
最近はTVでも南米アマゾン奥地の秘境ジャングルに…みたいな使われ方が増えていますが,南アメリカの熱帯雨林はセルバ,という呼称があるということは知っておきましょう。
さてもう1枚です。

この写真の特徴は?
「床が高い」
「壁が壊れている?」
「植物でできている」
などでしょうか。
「床が高い」
→高床式住居,といいます。
弥生時代の高床式倉庫や正倉院の柱についているのは?
「ネズミ返し!」
小学生で学んだことはなぜだかいつまでも記憶に残っていますね。
なぜ高床式なのでしょうか?
ネズミも少し関係してきます。
・高温多湿に対応して床下の風通しを良くし,過ごしやすくする。
・床下の湿気を防ぐ。
・害虫,害獣の侵入を防ぐ。
・感染症を予防する
などの説明がよくされます。
すべて納得できますか?
床下の湿気の原因の1つは毎日昼過ぎに降るにわか雨であるスコールです。
降水量が多いので,風通しが悪いと家の柱などがすぐに腐っちゃうからですね。
また,マラリアや黄熱病,デング熱などは蚊を媒介して感染しますが,蚊の幼虫であるボウフラの発生を防いで(水たまりができにくいから),感染症を予防する効果があると言われています。
害虫,害獣の侵入を防ぐのも同様で,ネズミに穀物を食べられる,というよりはネズミを介して感染症にかかるリスクを減らす効果も期待されているようです。
「壁が壊れている?」
→家の中も風通しを良くするためです。
エアコンや扇風機なんてないからね。
「植物でできている」
→「お金がないから?」いやいや,失礼です。
みすぼらしく見えるけど,当然ながらその地域に生えている植物で住宅は建設されます。こうした身の回りの建材を利用する方が修理などに便利だからです。
昔の日本でみられた茅葺き屋根の木造住宅とも共通するかもしれません。
みずぼらしく見えるのは私たち日本人の勝手な感覚で,熱帯雨林気候の特徴を理解すればとてつもなく合理的に住宅が造られていることとこれを生み出した先人の知恵に驚きですね。
さて,最後にサバナ気候(Aw)です。
この写真の特徴は何ですか?

この写真の特徴は?
「チーターかっこいい」
「奥に木がちょっと生えている」
とか?
「奥に木がちょっと生えている」
→熱帯雨林ほど木が鬱蒼と生い茂っているのではなく,ポツポツと生えているこの状態を疎林といいます。
「疎」は過疎の疎ですね。「そ」は訓読みですが,この漢字の音読みはわかりますか?
送り仮名をつけると「疎ら」です。
「まばら」と読みます。
木がまばらに生えているから疎林。
「チーターかっこいい」
→大切なのはチーターの周りに生えている草です。長草草原といいます。
TVなどでチーターが獲物に気付かれないように,風下から草の陰に身を潜めてじりじりと距離を縮めて……一気に時速100kmの猛スピードで獲物を仕留める!みたいなシーンを見たことありますよね。
この身を潜められる程度の「草」の「丈」が重要です。
次に学習する乾燥帯のステップ気候では短草草原という植生が登場します。
ステップ気候帯よりサバナ気候の方が雨が多く,長い草が育つから長草草原。
チーターが身を隠せるくらいの長さがあるのが長草草原,と覚えましょう。
しょうもない引っ掛けですが,よく模試などではこの長草草原と短草草原を入れ替えた選択肢などを目にします。
サバナ(サバンナ)→チーター→長草草原,もう大丈夫ですね。
最後にもう1枚。この木は見たことありますか?

この木何の木?
「星の王子さまのやつ!」
と思い出す人も多いかもしれません。
バオバブの木といいます。
写っている人と比べてもその形や大きさが特徴的ですね。
木の幹は空洞になっていて,大きなものだと中に10tもの水を蓄えているそうです。
当然,半年間雨の降らない乾季に耐えるためですね。
現地の人たちは果肉を食用にし,種子から油を取り,樹皮を解熱剤にも利用しているそうです。
1度でいいから,自分の目で見てみたいものですね。
このように,サバナ気候に生える主な木の樹種はバオバブやアカシアが有名です。
さて,これで熱帯の学習はおしまいです。
熱帯気候全般に赤く酸性で肥沃度の低いラトソルという土壌が分布
ボーキサイトはアルミニウムの原料になる
マングローブ林はエビの養殖のために環境破壊が進む
熱帯雨林気候の植生は多種類の常緑広葉樹
風通しを良くし,感染症などを防ぐために高床式住居がある
サバナ気候の植生は疎林と長草草原
ポイントをしっかり押さえることができましたか。
次回が乾燥帯気候を学習します。
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