温帯気候の特徴(地中海性気候,温暖冬季少雨気候,温暖湿潤気候,西岸海洋性気候)
さて,前回の授業では乾燥帯気候を学習しました。
今回は温帯気候を学習します。
温帯には最も多い4つの気候区分が存在しました。
気候記号と日本語名ですぐに答えられますか?
そうです,地中海性気候(Cs)と温暖冬季少雨気候(Cw),温暖湿潤気候(Cfa)と西岸海洋性気候(Cfb)でしたね。
これまでの各気候区と同様に,次の白地図を地中海性気候(Cs)は茶色,温暖冬季少雨気候(Cw)は黄緑色,温暖湿潤気候(Cfa)は緑色,西岸海洋性気候(Cfb)は深緑色に色分けしてみましょう。

白地図
それぞれの分布にはどのような特徴がありそうですか?
・CsとCfbは大陸の西岸に多い
・CfaとCwは大陸の東岸に多い
と大まかに分類できそうですね。
では,具体的に地中海性気候(Cs)の特徴を見ていきましょう。
改めて質問ですが地球上でCsが分布する地域を5カ所挙げなさい。
と聞くと,すぐに思い浮かびますか?
どの気候区分でも大まかに色分けができるようになってほしいところですが,特にCsの分布は12気候区分の中で最も重要です。
・地中海沿岸
・アフリカ大陸南端
・オーストラリア大陸南西岸
・アメリカ大陸西岸
・南アメリカ大陸西岸
この5つです。これだけは必ず覚えておきましょう。
ちなみにトルコから東側(右側)のほう(インドの北西部の方)にも内陸に一部地中海性気候(Cs)が分布していますが,このあたりが入試で出題されることはまずないので,あまり気にせず,上記の5カ所という認識でOKです。
そして地中海性気候(Cs)という気候を特徴づける気圧帯の名前もよく出題されます。
季節によって覆われる気圧帯が変わるから,夏に乾季を持つ気候になるんでしたね。
夏と冬の気圧帯を答えられますか?
夏は亜熱帯高圧帯,冬は亜寒帯低圧帯です。
雨季と乾季が生まれるメカニズムで学習しましたね。
夏に乾燥するんだから,「高圧帯」ですよ。
このあたりから間違えていませんか?
「低圧帯」とか言ってたら論外です。
chiriもわかりやすく解説しているつもりですが,その時はわかったつもりでいても,最低限覚えるべきことは覚えたり,理解した内容をきちんと使えたりするようにならないと,結局テストや模試,入試本番では問題は解けません。
自分が「解けない」ことに早く気づいて,繰り返し復習していきましょう。
さて,本題に戻ってもう1つ。
地中海沿岸に広がる間帯土壌の名前を覚えていますか?
カルスト地形の単元でサラッと触れました。
カルスト地形の凹地を何と呼ぶんでしたか?
そうです,大きくなるにつれてドリーネ → ウバーレ → ポリエ でした。
このポリエという盆地の底に石灰岩が風化してできるのが赤色のテラロッサという間帯土壌です。
また,土壌の単元で復習して整理しましょう。
次の写真を見てください。
何と呼ばれる作物かわかりますか?
そうです,オリーブですね。
もこみちが大好きなやつ笑
オリーブは樹木作物ですが,この写真で注目してほしいのは葉っぱです。
何か特徴はありませんか?
そうです,葉が厚いこと。
こうした樹木を硬葉樹と呼びます。
地中海性気候(Cs)には硬葉樹が多く生えているのが特徴です。
硬葉樹はなぜ葉が厚く,硬いのか,わかりますか?
そう,夏の強い乾燥に耐えるためです。
葉の表面から水蒸気が逃げていくのをできるだけ防ぐためですね。
地中海性気候(Cs)では耐乾性樹木作物と呼ばれる硬葉樹から成る作物が地域の特産物として多く生産され,私たちにとっても馴染み深いものになっています。
どんな作物たちか想像できますか?けっこうたくさんあります。
オリーブ,ブドウ,レモン,オレンジ,グレープフルーツ,コルクガシ,ローリエ(月桂樹),イチジクなどです。
オリーブはオリーブオイルとして日常的に用いるだけでなく,そのままオリーブの実を前菜として食べることも一般的です。
ブドウはワインの原料として有名ですね。
レモンも地中海が特産です。
午後の紅茶レモンティーのレモンは何産レモン使用ってペットボトルのラベルに書いてあるか知っていますか?
シチリア産です。
シチリア島はイタリア半島の南に浮かぶ島でレモンの栽培が盛んなので,午後の紅茶にも使用されているんです。
バレンシアオレンジって聞いたことありますか?
元々はアメリカで栽培され始めた品種のようですが,スペインの東部地中海沿岸にバレンシア地方とよばれる地域があります。
バレンシア地方で栽培される柑橘に似ていることから名づけられたらしいですが,やはりバレンシア地方もふくめた地中海沿岸で柑橘類の栽培が盛んなことを示しています。
グレープフルーツはアメリカが有名ですね。
地中海性気候が分布するアメリカの西海岸が主産地です。
コルクガシはワインのコルクなどの原料になります。
身の回りのコルク製品ってどんなものがありますか?
コルクボード,鍋敷き,コースターなど…バドミントンのシャトルにも使われています。
ではこれらからコルクの持つ特徴は何でしょう?
柔らかく,耐熱性と吸水性があり密閉性があることです。
余談ですが,chiriがポルトガルに行ったとき,コルクでできたハンドバッグを購入したことがあります。
言われないとコルク製品とわからないほど肌触りが滑らかで柔らかく,コルクの加工のしやすさや生活に根付いている様子を実感した記憶があります。
このコルクガシはコルク樫であり,実は木の樹皮を加工して用います。
人類が石油からプラスチック製品を作り出すよりもはるか以前から,自然の産物の特徴を生かして様々な製品に利用されているのは,先人の知恵に脱帽ですね。
ローリエは何かわかりますか?
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月桂樹という木の葉です。
ドラクエで呪いが解けるやつです(笑)
オシャレなカレーを作るときに最後に1枚鍋に入れる葉っぱ,といえば「あぁ,あれか!」と思い出す人も多いのでは?
関連する言葉で月桂冠は聞いたことがありますか?
日本酒じゃないですよ(笑)
様々なスポーツの大会で優勝した人が表彰台で頭に載せてもらうやつ,といえばわかりますか?
余談ですが,オリンピックのマラソン競技で優勝した選手が頭に載せてもらうのは月桂樹ではなく,オリーブの葉でできているそうです。
マラソンの起源は古代ギリシャのマラトンの戦いでの出来事だと世界史で学習した人もいるはずです。
いずれにしても昔から地中海でポピュラーな植物が使われているのですね。
イチジクはあまり頻繁に食べる人は多くないかもしれませんが,昔,小学校の給食で冷凍イチジクがときどき献立に入っていた記憶があるのはchiriだけでしょうか。
どちらにせよ,イチジクも耐乾性樹木作物なんだと思っておいてください。
長くなりましたが,これらの作物に実る果実の共通点は何だかわかりますか?
果実の皮が厚いことです。
当然,夏の強い乾燥に耐えるためですね。
農作物は本当に自然に対応して上手くできていますね。
あと1つ,地中海性気候の特徴というか,有名な文化として,お昼寝があります。
何というか,聞いたことありますか?
シエスタです。
主にスペインで見られ,午後3時ごろはみんなシエスタのために商店,企業,官公庁なども休業時間となります。
うらやましいですね。
人間の体内時計的にも午後2時~3時頃は最も活性が低下するんだとか。
学校で5時間目や6時間目はなんであんなに眠いのか,と悩む人も多いはず。
だからシエスタは生理的にはとっても合理的な習慣なんだそうです。
日本の学校もシエスタ導入してほしくないですか?
ただし,グローバル化やEU域内の画一化によって,徐々にシエスタの文化が失われつつあるのも事実。
地域固有の伝統的な文化がグローバリズムによって失われていくのはやはり,残念ですね。
次に温暖冬季少雨気候(Cw)についてです。
1番最初に確認しましたが,温暖冬季少雨気候(Cw)の分布地域の特徴は何だと思いますか。
・サバナ気候(Aw)の高緯度側に分布している
ということです。
これはなぜだかわかりますか。
雨温図の判別方法の単元で熱帯と温帯の見極め方を学習しました。
最寒月の平均気温が18℃を上回れば熱帯,下回れば温帯でしたね。
つまり「サバナ気候(Aw)の高緯度側に分布している」ということは,サバナ気候(Aw)と同様に乾季となる冬に亜熱帯高圧帯に覆われるものの,温暖冬季少雨気候(Cw)は少し高緯度にあるため,冬の寒さが少し厳しくなり,最寒月の平均気温が18℃を下回るようになる,ということです。
だから乾季のある季節は同じ,ということ。
いかにもメカニズムの学問である地理らしいと思いませんか?
このように,ケッペンの気候区分の色分けは画像で覚えましょう,といいましたが,やみくもに丸暗記するのではなく,メカニズムをきちんと理解していれば,覚えることが逆に減るわけです。
温暖冬季少雨気候(Cw)の植生の特徴は照葉樹です。
照葉樹とはシイ・カシ・クスなどの木が代表的で常緑広葉樹に分類されます。
照葉樹林はかつての西南日本にもたくさん存在していましたが,一度人間の手によって伐採されると落葉混合林に変遷していき,現在の日本ではまとまった照葉樹林はほとんどみられません。
現存しているのは社寺林(神社やお寺の周りに存在する林)の一部だそうで,昔ながらの日本の植生が残っている貴重な例だそうです。

クスの木
“File:川棚のクスの森 – panoramio.jpg” by sk01 is licensed under CC BY-SA 3.0
chiriも生物の先生に聞いて納得した話なのですが,アニメ「日本昔ばなし」に登場する神社やお寺の周りの森は周囲の針葉樹に対して木がモコモコ描かれているらしく,これは社寺林の照葉樹林を表しているそうです。
色々なところにさまざまな学問の一端が垣間見えて面白いと思いませんか?
次に温暖湿潤気候(Cfa)です。
温暖湿潤気候(Cfa)の特徴は雨温図の判別方法の単元でも学習したように,大陸の東岸に位置し,最暖月の平均気温が22℃以上となるため,気温の年較差が大きいことです。
季節風(モンスーン)の影響が強く,日本が夏,太平洋側で多雨になり,冬,日本海側で多雪になるのもこれでしたね。
植生は常緑広葉樹・落葉広葉樹・針葉樹が分布し,温帯混合林と呼ばれます。
成帯土壌は褐色森林土が分布します。
ちなみに褐色森林土が分布するのは温帯の中でも温暖湿潤気候(Cfa)と西岸海洋性気候(Cfb)だけです。
なぜ地中海性気候(Cs)や温暖冬季少雨気候(Cw)には褐色森林土が分布しないのでしょう?
これは土壌の作られ方を熱帯でも学習し,地中海性気候(Cs)や温暖冬季少雨気候(Cw)の植生を学習したからこそ,わかるはずです。
地中海性気候(Cs)や温暖冬季少雨気候(Cw)は基本的に常緑広葉樹で木の葉っぱが落葉しないから
ですね。
落葉して腐食し,土壌にならないからです。
幼い子どもたちが茶色で地面を描くのも,日本の土壌が褐色森林土であるからともいえるわけですね。
腐食層は有機物を多く含み,豊かな土壌となるため,アジアでは米,アメリカ大陸では小麦など,農作物の栽培が盛んです。
この辺りは農業でも改めて学習します。
さて,最後は西岸海洋性気候(Cfb)。
別名でブナ気候とも呼ばれるので知っておきましょう。
植生でブナの木などの落葉広葉樹が代表的ということです。
大陸の西岸に位置し,温暖湿潤気候(Cfa)と比べて気温の年較差が小さいことが特徴です。
主な分布地域はヨーロッパとニュージーランド,オーストラリア南東部とタスマニア島,チリ南部あたりを覚えておきましょう。
ちなみにこれらの地域に共通する気候要素や気候因子は何かわかりますか?
世界地図で見るとわかりやすいですが,主に偏西風と暖流の影響を強く受ける地域です。
中学校の社会でも嫌というほどしょっちゅう出題されると思いますが,ヨーロッパが高緯度のわりに冬暖かく,夏涼しい(=つまり年較差が小さい)のはこれが理由でしたね。
ヨーロッパと同じ気候区分になるということはそれを生み出す条件が離れた地域でも同じということです。
ちなみに秋田県と青森県にかけて広がる世界自然遺産は何かすぐに答えられますか?
ブナやナラの原生林である白神山地です。
chiriも1度訪れたことがありますが,マイナスイオンで溢れていて(気がする),とってもリラックスできるのでオススメです。
さて,ポイントをまとめます。
地中海性気候(Cs)…世界で5地域と耐乾性樹木作物
温暖冬季少雨気候(Cw)…Awの高緯度側で照葉樹
温暖湿潤気候(Cfa)…大陸東岸で褐色森林土,農業が盛ん
西岸海洋性気候(Cfb)…年較差が小さく,偏西風と暖流の影響:大
いよいよ気候も終盤に入ってきました。
次回は亜寒帯(冷帯)気候(D)を学習します。
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