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現役高校教師がどんな参考書よりもわかりやすく,センター試験で高得点を目標に,地理の授業を解説します。

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河岸段丘・洪積台地

   

前回の授業では沖積平野である扇状地・氾濫原・三角州について学習しました。

今日はまず,扇状地の上流にあることが多い河岸段丘について学習します。

段丘とは超簡単に言い換えると「階段」です。

河岸(かわぎし)にある階段が河岸段丘(かがんだんきゅう)なんです。

さて,次に示したモデル図が河岸段丘の断面図です。

河岸段丘のモデル図

河岸段丘のモデル図

 

河川を中心にしてきれいに階段ができていますね。

(河岸段丘は常に左右対称というわけではありませんが…)

今日の最初のクエスチョンは

  この河岸段丘はどうやってできたか?

です。

まず,スタートだけ説明します。

河岸段丘の多くはV字谷に土砂が堆積した谷底平野を基にして作られます。

谷底(たにぞこorこくてい)平野とは,地殻変動による河川勾配の減少や気候変動による降水量の減少などによって土砂が堆積することによって形成されます。

以下のモデル図を見れば,V字谷に土砂がたまって文字通り,谷の底に平らな部分が形成されるのはわかると思いますが,それがなぜ,「地殻変動による河川勾配の減少や気候変動による降水量の減少」によるのか,理解できますか?

谷底平野形成の様子

谷底平野形成の様子

 

漢字の羅列を「チカクヘンドウニヨル・・・」と音声として読むことは誰でもできますが,その内容や因果関係の意味を本当に理解できているかどうかをしっかりと考えながら,授業を受けたり,参考書を読んだりできているか,というのはメカニズムの学問である地理を学習していくうえで,非常に重要な力です。

 

まず,「河川勾配の減少」ですが,河川勾配とは漢字の通り,流れる河川の傾きを意味します。

河川の源流(流れ始め)と河口(流れ終わり)までの距離(河川の長さ)と高低差によって河川勾配は決まります。

もっとわかりやすく言えば,

  河川勾配=滑り台の傾き

とイメージしてください。

河川という滑り台の傾きが減少するということは,ゆるやか~な滑り台を自分が滑ると想像してください。

滑り台の下まで気持ちよく滑らない滑り台ほどモヤモヤする遊具はないと思いますが,ここでいう,滑らない滑り台に乗っている自分が土砂なのです。

そのため,地殻変動で河川勾配が減少すると,これまではもっと下流まで運搬されていた土砂が運ばれなくなり,堆積することで,谷底平野を形成します。

河川勾配の減少による影響がわかれば,「降水量の減少」も,もう理解できますね。

気候変動によって雨の降る量がこれまでより少なくなると,当然ながら土砂を運搬する力が小さくなるので,仮に河川勾配は一定のままであったとしても,土砂の堆積作用が大きくなり,谷底平野が形成されるわけです。

 

さて,前置きが長くなりました。

次の図が河岸段丘のモデル図です。

ちなみに河岸段丘の平らな部分を段丘面(だんきゅうめん),ストンと落ちているところを段丘崖(だんきゅうがい)とそれぞれ呼びます。

知っておきましょう。

図のように何段も段丘面が存在する階段状の地形ができるためには,

  どのような出来事が過去に起こったのでしょうか?

段丘面と段丘崖

段丘面と段丘崖

 

谷底平野にたまった土砂が以下のような状態だった時点から河川によって削られていき,現在のような段丘が生まれたわけですが,問題は

  どのように削られていくと,このような形になるのか

ですね。

河岸段丘の形成過程

河岸段丘の形成過程

 

この答えを考えるためには,現在の河岸段丘のうち,どの段丘面が最も古い(最初に削られた)のかということが重要です。

次のA~Cのうち,どの段丘面でしょう?

 

どの段丘面が一番古い?

どの段丘面が一番古い?

 

これは間違いなくAですね。

一番上にある地層から削られていくに決まっています。

ただし,ここでもう一つの疑問が生まれます。

  河川の幅は最も上にあるA-Aの幅よりも狭いのに,なぜこのように横に幅広く侵食されるのでしょうか。

答えは次の図です。

谷底平野の河川も蛇行する

谷底平野の河川も蛇行する

 

答えはこれですね。

上空から見るとよくわかりますね。

そう,河川は本来,蛇行します。

➀の断面図で見ると,河川は谷底平野の中心を流れているように見えますが,実際には蛇行しているため,蛇行している幅の部分まで横に侵食されます(図②中のX)。

では,なぜYのラインまで,河岸段丘の完成形では削られているかというと,この河川に大雨が降ったとき,川幅はもっと広くなり,ときには氾濫して洪水を引き起こすことで,より広範囲を侵食するからです。

(あるいは,Xのラインまで侵食されたのち,段丘ができる過程で少しずつ残りのX-Y間が風雨によって削られるからです。)

このように,河川には側方侵食と下方侵食という作用があります。

文字通り,河川の横と下のそれぞれに向かって地面を削ろうとする働きですね。

しかし,この側方侵食と下方侵食の力にも限界があることが分かるはずです。

②の図から,いきなり最初に示したモデル図のように,きれいな段丘ができるわけはありません。

②の図は次に,どのような形になるか,想像できますか?

もう一段深く段丘が侵食されるためには…

もう一段深く段丘が侵食されるためには…

 

そうです,③を見てわかるように,Aの段丘面までしか削れません。

グラウンドにホースを置いて,水を出しっぱなしにしたら,どうなるかわかりますか?

最初はどんどん地面が削れて水は蛇行しながら,流路を作っていくでしょう。

しかし,3分もすれば,ホースの水は地面を削ることができなくなるはずです。

たとえそのまま水を出しっぱなしにしても,次の日に30センチも下に深く削られているということはありえませんね。

だから,側方侵食と下方侵食には限界があるのです。

しかししかし,河岸段丘を作り出すためには,さらに下に地面を削るため,どうにかしないといけないわけです。

グラウンドの例でいえば,

  どのように条件が変われば,水の流れをさらに深い位置にすることができますか?

 

そうです,答えはおそらく2つ。

1つは蛇口をより強くひねって,もっと多くの水が流れるようにすること。

もう1つはホースの先をつまんで,同じ水の量でも勢いよく水が飛び出すようにすることです。

 

さて,これらを実際の河川に当てはめるとどうなりますか?

そうです,ヒントは先ほど学習した谷底平野のでき方について。

1つ目は,川の水が多くなればいいので,気候変動で降水量が増えるという環境変化が起こる。

2つ目は河川をつまむわけにはいかないので…

その通り,地殻変動などで河川勾配が大きくなれば,たとえ流れる水の量が同じでも,滑り台の角度が急になるわけで,流れる水の速度も速くなり,侵食力は増大します。

すると,この河川はさらに下方侵食する力を得るわけですね。

しかーし,ここでさらに質問です。

河川の下方侵食力が大きくなる理由は主に2つあります。

一体,河川が流れている地域で,

  どんなことが起こったら,下方侵食力は大きくなるのでしょうか。

 

1つ目はもちろん地殻変動ですね。

でも地殻変動って何?

ここでいう河川勾配が大きくなるような地殻変動とは河川の上流域の地盤が隆起し,流れ始めが高くなる(滑り台の滑り始める位置が高くなる)ということです。

ということはもう1つはセンスのいい人はわかるはず。

河川の流れ終わりが低くなれば良いですね。

河川の流れ終わり,つまり河口が低くなるのは?

そうです,海水面の低下

ということは要するに地球の寒冷化=氷河期の到来です。

氷河期が来れば海水が凍って北極の氷や南極大陸・グリーンランドの大陸氷河が拡大して,液体として存在する海水が減少する分,海水面は低下しますね。

地球温暖化で氷河が解けて海水面上昇によりサンゴ礁でできた島々が水没しそうという環境問題を耳にすることはよくあると思いますが,氷河期にはその逆の現象が起こると思えば,わかりやすいでしょう。

河岸段丘における侵食力増大のメカニズム

河岸段丘における侵食力増大のメカニズム

 

こうして,地番の隆起か海水面の低下が起こると,侵食力が増大し,河川はさらに一段下へと削られ始めます。

③の段階を経て,Bの段丘面ができるときは次のような形です。

もう一段,段丘面が形成されました

もう一段,段丘面が形成されました

 

最終形態はコチラ。

 

河岸段丘の出来上がり

河岸段丘の出来上がり

 

河岸段丘ができるメカニズムについて理解できましたか?

具体例としては最近ブラタモリでも放送された,群馬県沼田市が有名ですね。

資料集にも必ず写真が載っています。

ブラタモリの中でも紹介されましたが,上にある段丘面ほど水が得にくいため畑などが広がっていることが多く,河川に近い下にある段丘面ほど,水田としての利用が多いのが一般的です。

過去の先人たちの苦労によって用水等が引かれ,上にある段丘面でも水田や集落が発達している地域も少なくありませんが…

chiriも規模の小さいものしか生で見たことはなく,いつか,沼田の河岸段丘も訪れてみたいものです。

 

さて,つぎはもう一つの洪積台地

まず,台地という言葉に注目してください。

当たり前ですが,台地というからには台形ということです。

たとえば平野や平原といわれれば,標高が低くて平ら,ということですが,台地といわれれば,少し標高が高いところ,というイメージをすぐにできるようになってください。

馬鹿げたことをと思うかもしれませんが,重要なことです。

今はわかったような気になってくるかもしれませんが,そのうちすぐに,沖積平野や構造平野や洪積台地という言葉がこんがらがって,頭がパンクする時がやってきます(笑)

 

さて,次の図が洪積台地のモデル図です。

扇状地を学習した時と同じ質問をします。

あなたが,家を建てるなら,図中のA・B・C地点のどこに建てますか?

(=どこに集落が立地しやすいですか?)

また,その理由は何ですか?

洪積台地の断面図

洪積台地の断面図

 

答えはAです。

ちなみに,Cの部分を台地面,Bの部分を台地崖(だいちがい),Aの部分を崖下(がいか)と呼びます。

地形図の選択肢の文章中にいずれもよく出てくる言葉なので,きちんと覚えておきましょう。

Bは崖なので,そんな断崖絶壁に家を建てようと思う人はなかなかいません。

余談ですが,かつてchiriの授業で同じ質問をしたとき,「C」と答えた生徒がいました。

理由は「見晴らしがいいから。」。

なかなかロマンチックな答えだと思いませんか?

眺望の良いところに住みたいという感覚を持っている高校生ってかなりおしゃれですよね。

 

さてさて,Aに集落が立地しやすい理由に戻ります。

答えは水が得やすいから

扇状地の扇頂や扇端と同じですね。

  それでは洪積台地ではなぜ,A地点で水が得やすいのでしょう?

残念ながら,河川が近くにあるわけではありません。

 

川がだめなら………そう,地下水です。

洪積台地のA地点は地下水脈に近く,井戸を掘っても比較的浅い深さで水が湧き出し,水が得やすいからですね。

ちなみに,地下水があるということは地面の下で何が起こっているか,わかりますか?

地下に大きなプールがあってそこに水が溜まっているわけではありません。

扇状地で学習したように,水は堆積している土砂の粒が大きいと,その間を潜り抜けて地下深くへとどんどん水が潜り込んでしまいます。

この水が下へ下へと浸み込み続けるのではなく,一定のところで留まって帯水層を形成するということは…

扇状地の扇端と同様に,帯水層の下には粘土質の土砂が堆積しており,それ以上水が地下へ潜れないところで留まるわけです。

ということは水田と畑もそれぞれがどのエリアに多く分布するか,わかりますね?

  水田は崖下,畑や果樹園は台地面に多い

わけです。

台地崖は本当に結構な落差がある場合が多く,ほぼ,針葉樹林か広葉樹林が生い茂っていることがほとんどです。

最後に土地利用の応用問題です。

本来,水が得にくい台地面上に小規模ながら,集落が成立している場合もあります。

  なぜ,水が得にくい台地の上に集落が成立するのでしょう?

正解はやはり,水があるから,です。

次の洪積台地のモデル図を見てください。

洪積台地の土地利用(帯水層と宙水)

洪積台地の土地利用(帯水層と宙水)

 

台地の内部に水が存在しています。

これを「宙水(ちゅうみずorちゅうすい)」と呼んでいます。

断面図で見たときに,宙に浮かんでいるように見えるからですね。

台地下の帯水層に比べれば存在する水の量は小さいものの,台地の内部に偶然,粘土層があれば,そこに水がたまり,宙水が形成されるのです。

それにしても,昔はセンサーも探知機もない時代に,この宙水の存在に気づき,条件が不利な台地面上にも集落を作り上げていった祖先の方々の知恵と努力というのはすごいと思いませんか?

 

勘の鋭い人はもう気が付くかもしれませんが,扇状地における扇央と同様に,現在では台地面上にも大規模な集落が成立している場合もあります。

この場合は近年開発が進んだ新興住宅地(団地)だということが推測できますね。

こうした読み取りも地形図の問題で時々出題されますので,一般的な土地利用の理由と,例外的な土地利用の理由をそれぞれ整理しておきましょう。

 

さて,最後に実際の洪積台地の写真を見てみましょう。

成田空港から飛び立った飛行機の中から撮影した下総台地の写真です。

下総台地上空写真

下総台地上空写真

 

どこが台地面でどこが崖下の低地かわかりますか?

これでわかるかな?

これでわかるかな?

 

赤い斜線部分が台地面,黄色い斜面部分が低地の部分です。

それぞれの台地面を取り囲むように生えている木々の部分が台地崖です。

下総台地上空写真その2

下総台地上空写真その2

 

正面から右手前にかけて河川が流れていますが,その両側には台地が広がっているのがよくわかると思います。

さらにいえば,この河川は流路が部分的に直線化されていますね。

流路がくねくね蛇行するのではなく,直線を繋いだようにカクカク曲がっているのがわかると思います。

このように,机上での勉強を実際の生活の中で見つける楽しさこそ,地理を学ぶ醍醐味の一つですね。

 

ということで今日のまとめです。

  上流から谷底平野・河岸段丘→扇状地→氾濫原→三角州という地形がみられるのが一般的。

  河岸段丘は上にある段丘面ほど古い。

  河岸段丘は地盤の隆起か海水面の低下によって新たな段丘が形成される。

 

  洪積台地は台地面に畑・果樹園

  台地崖は針葉樹林や広葉樹林

  台地崖下は沖積低地であり,水田や集落

  宙水がある場合は台地面上にも集落

 

次の授業では砂州や砂嘴,陸繋島やトンボロなどの海岸地形について学習します。

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