高校地理をわかりやすく,そして楽しく!

現役高校教師がどんな参考書よりもわかりやすく,センター試験で高得点を目標に,地理の授業を解説します。

*

センター試験 地理B 2016 解説 第4問

      2016/01/26

センター試験 地理B 2016 解説 第4問

問1 ③

①がC,②がB,③がD,④がAとなる。

難易度は低めの問題です。

②はパリ盆地にあるケスタです。

硬軟互層の地層が選択侵食を受けて形成された左右非対称の丘陵地という説明が一般的です。

  ヨーロッパで小麦の生産量が最も多いのもフランス

ということからも,小麦の大規模栽培というキーワードが一致します。

その次に押さえておくべきなのが,今回答えになっている③です。

  カルスト地形はスロベニアという国のカルスト地方が語源である

というのは小地形の問題で頻出です。

あわせて重要なのが,スロベニアの位置。

イタリアの東側であるということを地図帳で確認しておくことが重要です。

④は断層運動がどうとかは気にする必要なしです。

酪農や混合農業はイギリスにおける特徴的な農業形態ですね。

①はヨーロッパで稲作と言われるとなじみがないかもしれませんが,ヨーロッパでもっとも米の生産量が多いのはイタリアです。

リゾットに使われるでしょ?

ちなみにこの沖積平野を作るのはポー川,平野はパダノヴェネタ平野のことですが,知っておく必要はないと思います。

法則性を大切にするならポー川は新期造山帯のアルプス山脈を源流とするため,河川の傾きがきつく,侵食力が大きいため,河口に土砂が堆積して沖積平野を形成します。

問2 ②

①がL,②がJ,③がK,④がMです。

ちなみにLとMはどこの国かわかりましたか?

Lがオーストリア,Mがセルビア共和国です。

①の「音楽の都」というキーワードからオーストリアの首都ウィーンであるとわかる人もいるでしょう。

そのほか,Mがセルビアのベオグラードだとわからなくても,このあたりが旧ユーゴスラビアであるという程度の理解があれば,問題文の説明から④が該当するとわかるはずです。

②は「隣国との間で貴族の移り変わりがあった都市」という部分がポイントです。

アルザス・ロレーヌ地方のことは世界史を学んでいれば判断が容易かもしれませんが,地理Bを履修している受験生には難しかったかもしれません。

chiriの授業ではEUの前身となるECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)の内容を学習するときに,アルザス・ロレーヌがドイツとフランス間の長年の係争地であったことに触れるようにしています。

一回きりの説明で生徒たちがどの程度覚えているかはあてになりませんが・・・

②のJはドイツのデュッセルドルフです。

外国企業や金融機関が多い都市というのは非常に細かい知識ですが,1960年代以降,日本の企業や銀行が多く進出しており,ヨーロッパ支店を置いている企業も多い都市のひとつです。

関関同立レベル以上の私立大学を地理で受験する受験生は知っておけばいいかなというレベルの知識です。

問3 ⑤

EU加盟国の農業に関する3つのデータを示した階級区分図で非常に判別が難しかった問題の1つです。

まず,農地面積1ha当たりの農業生産額は1つの畑から取れる農産物の金額の大きさを意味するため,土地生産性に置き換えられます。

  土地生産性は小麦などの穀物よりも酪農や花卉栽培を行っているほうが高くなります。

そのため,ヨーロッパで花といえば,オランダのチューリップですから,オランダが中位になっているウは不適です。

一方で農地面積1ha当たりの農業生産額がイギリスやドイツよりポーランドなどの東欧諸国が高いとは考えにくいため,イも不適。

残った,アが農地面積1ha当たりの農業生産額に該当します。

イとウの見極めも難しいですが,農産物の輸出入比は輸出額を輸入額で除した値と注にあるため,

農産物の輸出入比=輸出額/輸入額

で表されます。

ということは階級区分図で高位になっている国は相対的に分子の輸出額が大きくなっていると考えます。

アイルランドやポーランド,ハンガリー,リトアニアなどのヨーロッパにおける周辺国で値が高くなっていることから,第1次産業比率が英・独・仏などに比べると高いこれらの国々の農産物輸出が多いことがわかります。

逆にイギリス,スウェーデン,フィンランドでイの値が低いのは気候が冷涼で穀物などの輸入が多いからです。

残ったウが農業人口1人当たりの農業生産額が該当します。

労働生産性を示すため,農業の機械化や集約化が進んでいるフランスやドイツなどが高位であることが決め手です。

問4 ①

今年度の問題で最も判別が難しかった問題かもしれません。

最も判別しやすい順に考えると,

経済が最も安定している③のスイスやノルウェーが最も失業率が低いクに該当するというのはある程度感覚的にわかるでしょう。

次にわかりやすいのは最も失業率が高いカではないでしょうか。

財政破たんしたギリシャのニュースは受験生でも知っておきたいところ。

東ヨーロッパのハンガリーやポーランドも失業率が高いのではないかと考えた受験生も多かったかもしれませんが,西欧諸国の自動車工業などが東欧に進出していることを押さえていれば,さすがに新興国のハンガリーやポーランドであっても,失業率が20~30%ということはないと推測できるはずです。

キとケの判別は非常に難しいですが,特徴的なデータを示しているのは自国民の失業率より外国人の失業率が高いキです。

オランダ,フランスとハンガリー,ポーランドのどちらが自国民の失業率は比較的低く,外国人の失業率が高いかを考えると,北アフリカなどの旧植民地からの移民が多いフランスを含む①がキに当てはまります。

統計集にも直接的にこうした失業率のデータはないため,各国の産業構造EU圏内における労働力の移動についての知識を活用して解くことが求められる非常に難易度の高い問題といえます。

問5 ③

前問から一転,難易度は低い問題。

サは資本主義と社会主義という言葉が出てくることから,かつて,東西に分裂していたドイツです。

シは南部の国営による製鉄所というキーワードからイタリアのタラントを示しています。

南北の経済格差を解消するためにタラントに国が製鉄所を設けたというのは頻出事項ですね。

スはややなじみがないかもしれませんが,羊毛=ベルギー(フランドル地方)というイメージが連想できれば,難なく選択できると思います。

問6 ②

①はパスポートなしでEU内を行き来することが可能になった1995年のシェンゲン協定です。

③はアグリツーリズムと呼ばれ,農業体験農家民泊などが近年,日本でも注目され,マス・ツーリズムに対する観光の形として中山間地域で話題です。

④は具体例が思い浮かばないかもしれませんが,日本でも長崎の軍艦島など,近代明治の産業遺産が世界文化遺産に登録されたことを思い出せば,同じような取り組みがヨーロッパにおいても行われているのではと容易に想像できますね。

②は直接投資が減少した,が誤り。

直接投資とは簡単に言うと,海外へ企業や工場を建設して事業を展開することです。

EUの東欧への拡大によってEUという国際ルールの中で事業を展開できるため,より安価な労働力を求めて実際に日本企業も東欧への投資を増やしています。

 - センター試験過去問解説, センター試験2016(平成28年)